ユーロ6もクリア可能な330dを新たにラインアップ
以上のような内容のフェイスリフトだが、318i(143ps)から335i(306ps)までの5種類のガソリン仕様モデルのパワートレーン系に変更はまったくない。したがって、今回の欧州向け試乗会にはガソリン仕様モデルは335iのみが用意されていた。
その6速オートマチックのセレクトレバーは、前に述べたように相変わらずスティックタイプで、少々落胆する。おそらくここで5シリーズ以上のセグメントとの差別化を図ろうとしているのだが、せめて335iセダンくらいは、デュアルクラッチのDCTをオプション設定して欲しかった。
さて、走り出してすぐに伝わってくるエンジンおよび駆動系のスムーズさ、そしてシャープなステアリングフィールには取り立てて大きな変化はない。けれどもほんの数100m走って感じたことは、4世代目に入ったといわれるランフラットタイヤの固い乗り心地が弱まったことである。もちろんドイツの道路事情は欧州の中でもトップクラスなので、この影響もあるだろうが、後でシャシ関係のエンジニアに確認したところ、足まわりの変更はトレッドを広げただけとのことであった。
それゆえにこのフラットで当たりの柔らかな快適性は、ランフラットタイヤの改良の賜物なのだろう。一方広がったトレッドによる好影響はこの日のテストコースの終盤に設定されていたワインディングのヒルクライムで発揮された。もともと3シリーズの回頭性のクイックさは定評があったが、このフェイスリフトバージョンでは、さらにステアリングの手首の動きでノーズがすっとコーナーに向かう。3シリーズを選んで良かったと思う瞬間である。
ところで日本市場でも徐々に動きが出始めたディーゼルエンジン搭載モデルに関してだが、この試乗会には新しい330dも持ち込まれた。
このモデルに搭載されている3L直列6気筒ディーゼルエンジンは、新設計のアルミブロックを持っており、排気量は2993ccと変わらないが、最高出力は14psアップして245ps、最大トルクは20Nm増加して520Nmとなっている。しかもこの状態でユーロ5をクリアするばかりでなく、オプションのオキシダントおよびディノックス・キャタラーザーを装備するブルーパフォーマンス仕様は、2014年から実施が予定されているユーロ6もクリアする排出ガス浄化性能を持っている。
このようにフェイスリフトを受けた新しい3シリーズは、現行世代を超えた将来に向けての対策まで準備して市場に送り込まれたのである。このニュー3シリーズの発売はドイツでは2008年9月から開始された。4ドアサルーンの318iの価格は2万8000ユーロから、同じくツーリングは2万9650ユーロからと、それぞれ価格が発表されている。日本への導入時期については、まだ発表されていない。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)
BMW 335i セダン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4531×1817×1421mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1625kg(EU)
●エンジン:直6 DOHCターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:225kW(306ps)/5800rpm
●最大トルク:400Nm/1300-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●燃費(欧州複合):10.9 km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●最高速:250km/h
●0→100km/h加速:5.8秒
※欧州仕様
BMW 335i ツーリング 主要諸元
●全長×全幅×全高:4527×1817×1418mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1705kg(EU)
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:225kW(306ps)/5800rpm
●最大トルク:400Nm/1300-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・63L
●燃費(欧州複合):10.8 km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●最高速:250km/h
●0→100km/h加速:5.9秒
※欧州仕様