2008年4月、W204型メルセデス・ベンツC63AMGステーションワゴンが日本市場で発表されて話題を集めた。2007年10月のC63AMGセダンに続く意欲的なモデルだったが、この2台はボディタイプが違う以上に印象が異なるものだった。当時はメルセデスが大きく変わろうとしていた時代であり、他のモデルに見る変化も大きな注目を集めていた。ここではC63AMGセダンとともに行われた「C63AMGステーションワゴン」の試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年11月号より)

満足できるフットワークのC63AMGステーションワゴン

一方、セダンとステーションワゴンで、かくも同様な動力性能の印象に対して、フットワークのテイストが予想以上に大きく異なるものであったことには、少々当惑せざるを得なかった。

セダンのフットワークテイストはあくまでも「スパルタン」という言葉が似合うもの。実はこのC63AMGセダン、パワフルな心臓に対応してハードに締め上げた結果による乗り味があまりに「チョッピー」であったため、発売当初の仕様に対して現在はすでにサスペンションスペックの全面的な変更が行われているという。そして、今回テストドライブを行ったのもそうした「新スペック」の足まわりに組み直されたという個体だった。

ところが、そうしてより快適な乗り味が得られる方向でリファインされたはずの今回のモデルのフットワークテイストも、相変わらず十分に「スパルタン」と表現したい仕上がりであったのだ。リファイン前の状態のテストドライブ経験がないのでその比較論を語れないのが残念だが、わずかな路面凹凸を拾ってもボディに伝わる上下Gが目立ち、とくに高速道路の継ぎ目などを乗り越えると後輪側からの突き上げ感も強い。率直に言って、この乗り味で長距離・長時間を走り切るのは辛いだろうと思った。常にヒョコヒョコとした動きが生じ、それゆえ接地感が安定しないので、「エンジンは速いが脚は速くはない」と、そんな印象を受けたのがこのセダンのフットワークでもあったのだ。

しかしながら、デビューのタイミングがセダンよりも遅く、それゆえに当初から「リファイン型」のサスペンションスペックが採用されたというステーションワゴンの乗り味はまったく異なるものだった。

同じ路面をセダンと同様のペースで走行すると、こちらの方が遥かに「路面を舐めるように走る」という感覚が強い。微低速時には「しなやか」というフレーズは使えないものの、それでもこちらであればコンフォート性能は「速度を問わず十分にリーズナブル」という評価が与えられる。ボディの無駄な動きはセダンよりも確実に少なく、接地性もより安定。実際、雨に濡れたタイトなワインディングロードを、セダンよりも遥かに心地良く、かつアップテンポでリズミカルに駆け抜けることができるし、走ろうという気持ちにさせてくれるというのは予想外の展開だった。

これほどまでの差が生じるというのは、正直ボディタイプの違いのみからとは考え難い。確証が得られたわけではないのだが、今回の2台を乗り比べる限り「今でも両車のサスペンションスペックには明確な違いがある」とそのように受け取らざるを得ないのであるが。

ちなみに、今回テストの両車がともにフロント235/40、リア255/35という同サイズで履いていたピレリPゼロの18インチタイヤは、ウエットグリップ力そのものには不満はないものの、耐ハイドロプレーニング性能に不満が残ってしまった。雨天下、水が浮いている高速道路上を走る機会があったのだが、路面状況によって、自分の想像よりも低い速度でハイドロプレーニング現象が発生しつつあることを何度か体感。リミッターが解除されれば恐らく300km/hレベルの最高速度をマークするであろう実力の持ち主が、日常生活で遭遇する雨量において、その1/3ほどのスピードでたちまちハイドロプレーニング現象に見舞われてしまうというのは、個人的にはちょっと解せないポイントだ。

というわけで、走りの性能上でも快適性能面でも今回のセダンのフットワークの仕上がりはとても満足ができるものではなかったというのが本音になる。が、もしもステーションワゴンのフットワークテイストこそが本来狙った仕上がりぶりであるのとすれば、一転してC63AMGの個人的評価はとても高いものになる。(文:河村康彦/写真:村西一海)

画像: C63AMGステーションワゴン。C63AMGにはスポーツサスペンションや専用のスポーツシート、強化ブレーキシステム、3ステージESPが装備される

C63AMGステーションワゴン。C63AMGにはスポーツサスペンションや専用のスポーツシート、強化ブレーキシステム、3ステージESPが装備される

メルセデス・ベンツ C63AMG ステーションワゴン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4705×1795×1450mm
●ホイールベース:2765mm
●車両重量:1860kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:6208cc
●最高出力:336kW(457ps)/6800rpm
●最大トルク:600Nm/5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・66L
●10・15モード燃費:6.1km/L
●タイヤサイズ:前235/40R18、後255/35R18
●車両価格(税込):1054万円(2008年当時)

メルセデス・ベンツ C63AMG セダン 主要諸元

●全長×全幅×全高:4720×1795×1440mm
●ホイールベース:2765mm
●車両重量:1800kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:6208cc
●最高出力:336kW(457ps)/6800rpm
●最大トルク:600Nm/5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・66L
●10・15モード燃費:6.1km/L
●タイヤサイズ:前235/40R18、後255/35R18
●車両価格(税込):1030万円(2008年当時)

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