ガソリンスタンドと超小型EVがコラボする理由
「電動化」という言葉がひとり歩きしている感もある昨今だが、いずれにせよ2030年代半ばにはエンジンだけで走る新車の販売はほぼなくなるのは間違いない。そんな近未来に危機感を持っているのは、自動車メーカーだけではない。従来、石油関連製品(ガソリン、軽油、灯油ほか)の販売を行ってきたガソリンスタンド(サービスステーション=以下、SS)にとっても、もはや傍観していられる状況ではないのだ。「地域のエネルギー供給」という役割に加え、地域社会への新たな貢献が求められている。
新たなビジネスモデルにいち早くシフトするのが、シェルとの経営統合も記憶に新しい出光興産である。同社は2021年4月から、全国のSSをより地域密着型の「アポロステーション(apollostation)」にリニューアルして、新たなサービスの提供を目指す。
従来の石油製品の販売に加えて、太陽光・風力発電などの再生可能エネルギー、水素や合成燃料などの次世代エネルギーなど「地域のエネルギー供給」としての役割、さらに介護サービスや物流サービスなど「地域の暮らし」をサポートする役割、そしてクルマのリース・シェアサービスやメンテナンスサービスなど「移動」の提供などを行う役割。出光興産が目指すのは、地域に密着したライフパートナーへの脱却だ。
その新たな取り組みの中核となりそうなのが「EV」。出光興産がそのビジョン実現のパートナーとして選んだのが、モータースポーツ界の超有名人=田嶋伸博氏率いる「タジマモーターコーポレーション」だ。長年、車両・EV開発で実績を積み上げてきたのが同社だが、田嶋氏がEVに関心を持つに至ったきっかけが興味深い。
「WRCラリーに参戦していたころ、毎年同じコースを走るのだがコンディションが(気候変動の影響で)毎年のように変わってしまい、前年のペースノートが使えない。地球が壊れていく現状を目の当たりにしていた」(田嶋氏)
気候変動に並々ならぬ関心をもった田嶋氏は、慶應大学発のEVベンチャー「シムドライブ」を吸収。モータースポーツ参戦で培ったスピーディな車両開発技術を生かしてEV開発の関連会社「株式会社タジマEV」を設立して事業化の道を探るなど、果敢に挑戦を続けてきた。