マツダ ロードスターの「伝説の開発主査」こと貴島孝雄氏が、現役時代に出会った記憶に残る人物を紹介する連載企画。今回の交友録は、ル・マン24時間レースで大活躍した、寺田陽次郎氏が登場する。現在も公私共に親交が深い、強固な信頼関係を振り返る。
寺田さんと戦ったレース経験がRX-7の開発に生かされた
現在、寺田さんはマツダ車のアフターパーツブランド「オートエクゼ」の代表取締役社長を務める。その人柄が会社にも表れているという貴島さん。
「俺が俺が、という性格ではなく温厚な方なんです。話し上手だし、一度大学で講演してもらおうかと思っているくらい(笑)」
オートエクゼのサスペンションは、ストリート向けが基本。車種によってはサーキットを見据えたスペックまでラインナップされている。その中のひとつに「KIJIMA SPEC」がある。このブランド誕生のきっかけは、足まわりに対する意見が寺田さんと一致したことにあるという。
「貴島さんにはマツダスピード時代、ル・マン787Bのシャシー設計でアドバイスをもらいました。その考えに共感を持ち、オートエクゼの足まわりを作る際に、貴島さんに協力をお願いしました。『大人が楽しめる足』とリクエストしました。一般道はサーキットの路面と違って、凹凸があったり、首都高速には滑りやすいつなぎ目もあります。そのためKIJIMA SPECのテストでは、つなぎ目を再現したコースもあります。レーシングカーだったらこのつなぎ目で飛んじゃいますよ」(寺田さん)
数々のスポーツカーに携わってきた貴島さんだからこそ、オートエクゼの目指すセットアップを実現できた。貴島さんの愛車でもある、3代目ロードスター(NCEC)には当然「KIJIMA SPEC」が装着されている。これまで蓄積したいろいろなノウハウが詰まったサスペンションの出来栄えは、自らきっちり実証済みだ。