最後の1年に向けて、準備はすべて整った
ホンダにとって2021年はF1活動最後のシーズン。打倒メルセデスAMG、悲願のタイトル獲得に向けて、パワーユニットを骨格から新たに設計し直し、パッケージ全体のパフォーマンスを大幅に上げて開幕にのぞむ。2000年代のF1参戦第3期とは異なり、最後の挑戦の機会として1年が与えられた今回の意気込みは凄まじいものがある。
ニューエンジンの投入はトラブルの危険性もはらみ、こうしたアクシデントはタイトル奪取の命とりになりかねない。そのために、プレシーズンテストでは多くの周回を重ねた。その周回数は3日間でアルファタウリが全チーム中で最多、レッドブルと合わせてホンダのパワーユニットは791周、4281kmを走行した。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「今週末のレースに向けてパワーユニット、車体ともに貴重なデータを収得することができました。両チームともにパフォーマンス的にもいい手応えを得ています」と自信を覗かせる。
具体的にエンジン部分のどこを変更したのかという質問には「カムシャフトのレイアウト、ボアピッチ、バルブ挟み角、燃焼室など、骨格からすべてです。エンジンを大幅にコンパクトにして、これによりボディまわりの空気の流れも変わりました。パワーユニット自体の性能向上と低重心化、コンパクト化を図ることにより、車体パッケージ全体でのパフォーマンス向上にも貢献しています」と語ってくれた。
ドライバーラインアップは、アルファタウリにルーキーの角田裕毅を、レッドブルに経験豊富なセルジオ・ペレスを新たに起用し、ピエール・ガスリー、マックス・フェルスタッペンとともに、レッドブルとアルファタウの両チームとも新しい体制としている。
バーレーンGPに向けては、田辺豊治ディレクターは「パワーユニット、車体、ドライバー、チーム体制などレースに向けて、これまでで最高の準備ができていると感じています。我々の目標となるチャンピオンシップ獲得に向けて、両チームとともに一つ一つのレースを大切に最善を尽くして戦っていきたいと思います」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
角田裕毅(アルファタウリ)
「いよいよF1デビューになります。たっぷりと走り込むことができ、準備はできていると感じています。テストではパワーやブレーキといった部分のみではなく、F1特有の複雑なステアリング操作についても学び、プッシュした際やマシンの挙動が乱れたときに、どのような操作をするとどう反応するかといった部分も含めて理解を深めることができました。また、セッションごとに得られたデータから学びを重ね、成長することができたと思っています。開幕戦から全力でプッシュして、マシンの限界を確認しながら色々な経験を重ね、シーズン中盤から後半にかけていい形にまとめていければと思っています。また、チームメイトには経験豊富なガスリー選手がいるので、彼の走りからも多くのことを吸収していきたいと思います。2014年以来7年ぶりの日本人F1ドライバーとして、日本のファンの皆さんがとても期待してくれていることも分かっています。皆さんに喜んでもらえるように全力を尽くします」
ピエール・ガスリー(アルファタウリ)
「このチームに加入して以来、一番のプレシーズンテストと言っていいほど、本当に実りの多いテストになりました。技術面でもメカニカル面でも心配がないことにも勇気づけられています。最初の数周からマシンのフィーリングはよかったですし、テストではポジティブな発見がたくさんありました。シーズン開始にあたってすごくいい基礎ができていますし、何か変更を加えればマシンもよく反応するので、いい傾向だと思います。テストでは全開でプッシュしていないので、パワーユニットの改善点ははっきりとは分かっていませんが、ホンダの取り組みはよくわかっていますし、多くの周回を走ったにもかかわらず、3日間のテストでパワーユニットの問題がゼロだったことには勇気づけられました。開幕戦でさらにプッシュすることで、また良いアイデアが得られるはずです。チームとして見ると、2人のドライバーがそろって役割を果たせたことが重要です。ユウキ(角田裕毅)がテストで良い仕事をしてくれて、多くの周回を走行することができました。彼はミスをせずに、求められたことをやりきりました。僕ら2人とも、シーズンに入る準備はできています」
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
「テストが順調にいったことで、ポジティブなシーズンの幕開けとなりました。走行距離を伸ばせてマシンの理解が進んだことに満足していますが、純粋なパフォーマンスという面ではまだ何も言えません。みんながエキサイトしているのも知っていますが、メルセデスは僕らが最強だと思わせてプレッシャーをかけようとしているのではと思います。僕らは自分たちのことに集中するのみです。チームの誰もがメルセデスをはじめとしたライバルに打ち勝つべくプッシュしています。簡単に倒せる相手ではないですし、テストの内容だけを見て僕らが上にいると思うなんて馬鹿げています。個人的にはQ3を全開で走るのが待ちきれません。燃料搭載を少なくしてフルパワーで走るので、そこで誰がパフォーマンス面で進化しているのかがわかります。僕も、チームも全力を尽くしてタイトル争いができるように挑戦します。バーレーンは好きなサーキットですし、自分たちのパフォーマンスを楽しみにしています。誰が正しいのかが明らかになるときはもうすぐです」
セルジオ・ペレス(レッドブル)
「テストはすごくポジティブでした。チームとして、いい準備ができたと思います。レッドブルでの初戦を楽しみにしています。序盤の数戦はできる限り多くを学び、早くスピードを発揮できるようにしたいです。そうすれば、シーズンを通じていいポジションにつけられるはずです。(パフォーマンスの面では)まだ序盤なので、これから見ていきましょう。ライバルたちが何をしているのか解明しようとすればするほど、自分たちは迷ってしまうものなので、そうしたことにあまり意味はありません。予選まで待つ必要がありますし、そこで全員の立ち位置が分かります。このチームで走ることは、僕がこれまで夢見てきたことです。待ちきれないですし、サーキットでファンの皆さんに会い、レースをすることを心の底から楽しみにしています。今はとてもリラックスしていて、僕の全力を出しきるのみです。最後にどうなるか見ていきましょう」
タイヤを供給するピレリはバーレーンGPについて「決勝レースは日没後の18時に照明の下で開始されます。レースが開始されるとすぐ、路面温度は急速に低下します。これはタイヤ戦略に大きな影響を与えます。また、バーレーンのアスファルト(花崗岩含有量が高い)は研磨性があり、タイヤの摩耗と劣化が進むことでよく知られています。昨年のレースは、赤旗中断や複数のセーフティカーがありましたが、ルイス・ハミルトンがミディアム→ミディアム→ハードの2ストップで優勝しました。2位でフィニッシュしたレッドブルのマックス・フェルスタッペンはタイヤを4回交換しています。このコースは横方向の負荷は大きくなく、多くのタイヤ戦略が見られるのも特徴です」と分析している。
【参考】2020年F1第15戦バーレーンGP 決勝 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 57周
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+1.254s
3位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +8.005s
4位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+11.337s
5位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+11.787s
6位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) +11.942s
7位 3 D.リカルド(ルノー)+19.368s
8位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+19.680s
9位 31 E.オコン(ルノー) +22.803s
10位 16 C.ルクレール(フェラーリ) +1周
11位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +1周
バーレーンGPは2020年レッドブル・ホンダが2・3位、アルファタウリ・ホンダも6位と、ホンダにとって相性のいいグランプリ。2021年はフリー走行1回目が3月26日14時30分(日本時間20時30分)にスタート、予選は3月27日18時(日本時間24時)、決勝は3月28日18時(日本時間24時)に開始される。開幕までもうすぐだ。
2021年F1開幕戦バーレーンGP タイムスケジュール
フリー走行1回目:3月26日14時30分〜15時30分(日本時間20時30分〜21時30分)
フリー走行2回目:3月26日18時〜19時(日本時間24時〜27日01時)
フリー走行3回目:3月27日15時〜16時(日本時間21時〜22時)
予選:3月27日18時〜19時(日本時間24時〜28日01時)
決勝:3月28日18時〜(日本時間24時〜)