マイバッハブランド2番目のシリーズとして登場
2000年にダイムラークライスラー社(現在のダイムラー社)が企画したハイエンドラグジュアリーモデル「マイバッハ」は、独立したブランドとしておよそ10年続いたが、販売不振のために2011年に終焉を迎えてしまった。
しかし、2014年に再びメルセデス・ベンツのサブブランドとしてスポーツの「AMG」に対する、新しいラグジュアリーブランド「マイバッハ」として蘇った。そしてSクラスをベースにスタートしたこの新しい戦略は的中し、2019年にはSクラスの6台に1台はマイバッハだった。そして2020年、2番目のシリーズとしてメルセデス・ベンツのトップSUVであるGLSをベースにした「マイバッハGLS600 4マティック」が誕生した。
全長5205mm、全幅2030mm、全高1838mm、重量2785kgというボディの基本デザインはGLSだが、縦格子のマイバッハグリルとその下の開口部に入るアルミメッシュグリルがかなり目を惹く。そしてボンネットにはSUVシリーズとしては唯一スリーポインテッドスターがそびえている。
マイバッハオーナメントでないのは少々残念だが、リアクオーターにはダブルMのマイバッハエンブレムが輝いている。標準で22インチタイヤを履いた姿は巨大な建造物、まるでお城のような雰囲気だ。
リアシートの広々空間はまさにファーストクラス感覚
まずは運転手としてフロントに乗り込もうとドアノブを引くとマイバッハロゴの入った銀色に輝くフットステップがせり出してきた。ドライバーズキャビンは1世代前、すなわち現行Eクラスと同じワイドスクリーンタイプで、残念ながらニューSクラスのような巨大なセンターディスプレイは装備されない。しかし、ドライバー&パッセンジャーが触れる部分はすべてレザー、あるいは表面がソフト仕上げのプラスチックである。
マイバッハGLSはドライバーズカーとしても十分以上の働きをする。大きいボディにもかかわらずSUV特有の見晴らしの良さ、キレの良いハンドルのおかげで街中での走行でも苦労することはなく、全方位カメラで駐車も楽だ。
シリンダー休止システムを搭載した4L V8ツインターボエンジンと9速AT、Eアクティブエアマティックのコンビネーションはスムーズそのものだが、「カーブ」を選択するとコーナーではおよそ3度までロールを制御して後席の乗員の体が揺すられるのを防ぐ。
さらにドライブモードには「コンフォート」「スポーツ」のほかに「マイバッハ」があり、これを選択するとセカンド発進、そしてスロットル、ギアシフトがいっそうスムーズになるほか、アイドリングストップがオフになる。
48VのMHEVでエンジンのオン/オフは通常よりもスムーズになってはいるが、マイバッハでは燃費よりもリアコンパートメントのお客様の快適性が優先する。試しに後席へ移ったらそこは豪華なファーストクラスのラウンジ感覚で、オプションで150万円以上する真っ白のレザートリムは土足で上がり込んでは失礼なほどである。また仕上げは緻密かつ入念で、ドアロックの小さな受け穴の内側までレザーが貼ってある。
リアセパレートシートは通常位置から後退、ドアからも1.5cm内側に入っているので広々として余裕がある。リクライニング角度は43.5度まで倒れるが、シート内のエアバッグで、衝突時に乗員がシートベルトから下にすり抜けるサブマリン現象は避けられる。またトランクとキャビンは完璧に仕切られており、防音ガラスは当然で、空調の小型電気モーターにもラバーダンパーが装着されているほどの気の遣いようである。
ドイツ市場でのベースモデルの価格は16万2495ユーロ(約2100万円)だが、文中に書いたように試乗車の長いオプションリストを見れば、あっという間に3000万円は超えるだろう。日本での発売時期や最終価格はまだ発表されていない。(文:木村好宏/写真:キムラ・オフィス)
メルセデス マイバッハGLS600 4マティック主要諸元
●全長×全幅×全高:5205×2030×1838mm
●ホイールベース:3135mm
●車両重量:2785kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ
●総排気量:3982cc
●最高出力:410kW(557ps)/6000-6500rpm
●最大トルク:730Nm/2500-5000rpm
●トランスミッション:9速AT(9Gトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●燃費:8.3km/L(EU準拠)
●タイヤサイズ:前285/45R22、後325/40R22