1.6L 直3ターボエンジンをカローラ スポーツに搭載
水素エンジンとは、ガソリンエンジンから燃料供給系と噴射系を変更し、水素を燃焼させることで動力を発生させるものだ。したがって、トヨタ MIRAIなどに使用されている燃料電池（FC）が、水素を空気中の酸素と化学反応させて電気を発生させモーターを駆動させる方式とは、まったく異なる。ガソリンエンジンでも発生する、ごく微量のエンジンオイル燃焼分を除き、走行時にCO2（二酸化炭素）は発生しない。
ただ、水素エンジンそのものの発想は新しいものではない。BMWでは水素エンジンを搭載した7シリーズ「ハイドロジェン 7」を2000年代中ごろに開発していたし、マツダもほぼ同じ時期に水素ロータリーエンジンの実用化を目指していた。しかし、さまざまな技術的問題もあり、いずれも市販化には至っていない。
水素エンジンを搭載した競技車両のベースとなるカローラスポーツ。
トヨタでは、カローラスポーツをベースとした競技車両に、新開発の水素エンジンを搭載し、5月21〜23日に行われるスーパー耐久シリーズ「2021 Powered by Hankook 第3戦 NAPAC 富士 SUPER TEC 24時間レース」から、「ORC ROOKIE Racing」の参戦車両として投入する。
搭載されるエンジンの概要は、以下のとおり。
●総排気量：1618cc
●種類：直列3気筒インタークーラーターボ
●使用燃料：圧縮気体水素
残念ながら、パワースペックをはじめとする主要諸元は今のところ公表されていないが、排気量と気筒数が同じであることから、GR ヤリスに搭載されているエンジンをベースにしているようだ。
水素エンジンにおける水素の燃焼の速さは、ガソリンよりも速く、応答性が良いという特徴がある。優れた環境性能を持つと同時に、クルマが持つ、音や振動を含めた「クルマを操る楽しさ」を実現する可能性を秘めているというわけだ。
また、今回の水素エンジンには、2020年9月に販売開始したGR ヤリスなど、モータースポーツで鍛え続けてきた技術も活かしている。安全性については、燃料電池車の開発やMIRAIの市販を通して、積み重ねてきた技術やノウハウを活用している。
スーパー耐久シリーズのイメージ写真
なお、競技中には福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」にて製造された水素を使用する予定だ。水素活用の促進によりインフラ拡大を目指すとともに、引き続き経済復興・地域の活性化に向けた取り組みも関係者とともに進めていく。
トヨタでは、モータースポーツの厳しい環境で水素エンジンを鍛えていくことで、サスティナブルで豊かなモビリティ社会の実現を目指していくという。
水素エンジン イメージ動画
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