2008年秋、E90型BMW3シリーズがフェイスリフトを受けて日本に上陸した。変更はいわゆるマイナーチェンジレベルのものではあるが、Motor Magazine誌が特集を組むほど大きな注目を集めている。それはDセグメントのベンチマークとして人気の高いBMW3シリーズが、実質的かつ強力な進化を遂げていたからだ。ではその進化とはどいいうものだったのか。ここでは、320i、 325i ツーリング、335iの3台を日本の道を走らせたインプレッションを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年1月号より)

セダン/ツーリングの熟成度をあらゆる面で確認

今回は、320i、335iというセダン、そして325iツーリングという最新の3台をテストドライブしたが、その印象は、いずれも従来型との大きな走りのテイストの違いを感じるには至らなかった。

すなわちそれは、どのモデルのハンドルを握っても「相変わらずBMW車らしい、走りの心地良さをタップリと味わわせてくれる」ということである。もちろん、搭載エンジンの違いによる動力性能の差は明確に感じられるし、セダンとツーリングというボディの違いに起因するとみられる両者の微妙な印象の差も皆無ではない。しかし、3車に共通するのは「ドライビングという行為そのものを楽しませてくれる」というこれまで同様のBMW車ならではスタンスだ。

そしてそれはまた、このブランドの「FR」や「50:50の前後重量配分」といった記号性へのこだわりを、いちいち納得させてくれるものと言っても良いものだった。

今回の3車中では「最もアンダーパワー」な4気筒エンジンを搭載する320i。確かにその加速の能力は、絶対的には強力なものとは言い難い。

ただし、それでもストレスなく回る軽やかなフィーリングのエンジンと「限られたパワー」を巧みに引き出すワイドレンジの6速ATとの組み合わせは、実用上では文句のない力感を提供してくれる。

一方で、走り出し時点では「フットワークがよりしなやかになったか」と思わせてくれたものの、ある程度速度が上がるとやはりランフラットタイヤらしい上下Gの強さは残っていることを再確認。

残念だったのは「まったり」と重いステアリングの味付けがそのままに残されたこと。これはとくに4気筒エンジンを積む320iのキャラクターには、ちょっと不釣合いなほど重々しい操舵感で、「きっと次のリファインでは改善してくるだろう」と予想をしていたがそれは見事に外れた。しかし、改めてこうしたチューニングで世に送り出されるのは、こうした味付けにも確固たる信念があるということだろうか。

画像: エントリーモデルに位置づけられる320i。N46B20型直4エンジンはストレスなく軽やかに回り、実用上では文句のない力感を提供してくれる。後ろは325iツーリング。

エントリーモデルに位置づけられる320i。N46B20型直4エンジンはストレスなく軽やかに回り、実用上では文句のない力感を提供してくれる。後ろは325iツーリング。

そこから325iツーリングへと乗り換える。こちらが搭載するのは、額面上は320i用の4気筒ユニットを62psも上回る最高出力を発する6気筒ユニット。が、そうした気筒数の差が生み出すフリクションロスの増加に加え、テスト車両がアクティブステアリングや電動パノラマガラスサンルーフなどのオプションを装備することによる120kgもの重量ハンディを背負うせいもあってか、スタートの瞬間の力強さに関してはさしたるアドバンテージは認められなかった。

とはいえ、もちろん6気筒エンジンならではの滑らかなパワーフィールは見逃せない。絶対的なパワーの差よりも、こうした上質さの上乗せ分が325iならではの大きな売り物と言えそうだ。

セダンボディとの差を実感するのは、路面凹凸を拾った際に低周波ノイズが鼓膜を刺激するのをわずかながらも感じる時。一種ドラミング的なこの感覚は、前述のようにテスト車が大面積のサンルーフを装着していたこととも関連があるかも知れない。決して大差とは言えないが、走りの上質さはやはりセダンに軍配が上がるというのは、実はこれまでも感じていた3シリーズ両ボディに対する印象だ。

画像: 325iツーリングはN52B25A型直列6気筒ユニットを搭載。320iの4気筒よりもパワフルなだけでなく、その滑らかなパワーフィールは見逃せない。

325iツーリングはN52B25A型直列6気筒ユニットを搭載。320iの4気筒よりもパワフルなだけでなく、その滑らかなパワーフィールは見逃せない。

そんなツーリングから再度セダンボディの335iへと乗り換えると、ツインターボと直噴システム付きという贅沢なメカニズムを採用するこのモデルが搭載するエンジンが、やはり別格の高性能ぶりを発揮するユニットであることを改めて実感させられる。

他モデル同様の6速ATを採用しつつも、スタートの瞬間からのパワフルさはこのモデルが「並のセダン」ではないことを端的に物語る。それもそのはずでこのモデルの0-100km/h加速データはわずかに5.8秒。その俊足ぶりは、明らかに「特別な」という形容詞を付けるに足るものであることを証明してもいるのだ。

それはまるで、M3が「6気筒エンジンを卒業」した後を穴埋めするという意味合いが与えられたかのようですらもある。そう考えれば、その高価さも思わず納得させられてしまうのが335iというモデルであるとも言えるだろう。

いずれにしても、今回テストの3台はどれもいよいよE90型の熟成が進んできたことをアピールする、あらゆる面での上質さが印象に残る仕上がりぶりの持ち主。「最もポピュラーな輸入車の1台」たる3シリーズの日本でのセールスも、いよいよ佳境に入って来たということだろう。(文:河村康彦/写真:永元秀和)

画像: 別格とも言える高性能ぶりを発揮する335i。N54B30A型直6エンジンはパラレルツインターボを装備し1300rpmから最大トルクを発生、0→100km/h加速は5.8秒。

別格とも言える高性能ぶりを発揮する335i。N54B30A型直6エンジンはパラレルツインターボを装備し1300rpmから最大トルクを発生、0→100km/h加速は5.8秒。

BMW 320i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4540×1800×1440mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1430(1470)kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1995cc
●最高出力:115kW(156ps)/6400rpm
●最大トルク:200Nm/3600rpm
●トランスミッション:6速MT(6速AT)
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●10・15モード燃費:12.8(12.0)km/L
●タイヤサイズ:205/55R16
●車両価格:434万円(445万円)2008年当時

BMW 325i ツーリング主要諸元

●全長×全幅×全高:4535×1800×1450mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1580kg
●エンジン:直6DOHC
●排気量:2496cc
●最高出力:130kW(218ps)/6500rpm
●最大トルク:250Nm/2750-4250rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●10・15モード燃費:9.3km/L
●タイヤサイズ:225/50R16
●車両価格:555万円(2008年当時)

BMW 335i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4540×1800×1440mm
●ホイールベース:2760mm
●車両重量:1620kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:225kW(306ps)/5800rpm
●最大トルク:400Nm/1300-5000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●10・15モード燃費:8.9km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●車両価格:673万円(2008年当時)

This article is a sponsored article by
''.