FFでLSを凌ぐ室内空間の持ち主
2018年にESがデビューした時、日本人にとって「FFのレクサス」は、ちょっと奇妙な存在だったかもしれない。ブランドそのものの日本展開は2005年から。GSとISから始まりLSへと連なる当初のラインナップ戦略は、レクサス=FRというイメージを強く印象付けてしまった。「しまった」という表現は、これがちょっとした誤解だったから。
グローバルで見ればレクサスブランドが1989年に誕生した当初から、ESはFFプレミアムサルーンとして存在していた。日本向けには「ウィンダム」など別名で導入された時期もあったけれど、正式にレクサスファミリーに加わるまでには7世代、30年以上という長い歳月がかかった。しかも世界的なセールスを見れば、アッパーミドルクラスのサルーンとしては後輩にあたるGSを大きく凌ぐ売れ筋・・・結果的に2020年8月、GSは生産中止となり、日本市場においてもESが今後、このゾーンを一身に担うこととなる。
そんなESが2021年4月グローバルにおいて、満を持して新たな一歩を踏み出した。フラッグシップであるLSを凌ぐ室内空間のゆとりはもちろん変わりはしない。全長、ホイールベースともに250~260mmほども短いにもかかわらず室内長は最大120mmも長い。新型ではそんな「空間的」なゆとりに加えて、「快適性」「操縦安定性」といった感性面でのゆとりが磨き抜かれている。
リアサスペンションメンバーブレースの構造を変更、従来は1枚板だったものを2枚の板を合わせることで剛性が向上した。ねじり、曲げといった動的剛性が改善され、乗り心地の質感を高めるとともに、高速道路でのレーンチェンジ時などでのさらなるリニア感、しっかり感を獲得している。
Fスポーツには新世代のリニアソレノイドバルブ式AVSを採用し、乗り心地と操舵応答性のレベルを引き上げている。油圧制御バルブの流路を拡大、減衰力制御の幅が広がっているという。
走りの質感を大きく左右する、制動時のブレーキペダルのタッチや踏み込みに対する効き具合も見直された。電子制御システムのブラッシュアップによってコントロール性が高められたほか、ブレーキペダルの形状や取り付け剛性も改良。踏み込みの安定感や、剛性感を向上させている。
RXやLSと同等の進化型ADASを採用
また新型ESでは、先進安全運転支援(ADAS)の技術に関しても、地道かつ着実な進化を遂げている。たとえば交差点での事故防止をさらに確実にサポートしてくれそうなのが、性能が向上した単眼カメラとミリ波レーダーだ。
具体的に役立ちそうなのが、右折車と直進車の衝突事故回避だろう。右折前に対向車線から接近してくる直進車の存在を検知、警告してくれるのだ。同様に右左折の際、前方からやって来る歩行者の存在も検知可能になった。高速走行時の車線認識性能も向上した。これまでより半径の小さなカーブやトンネル内などでも、しっかりアシストを続けてくれそうだ。
こうした中身の進化に対応して新型ESではフロントグリルにメッシュパターンを採用、さりげなく表情を変化さている。3眼ランプのアダプティブハイビームも薄型ユニットの採用で鋭い眼差しに変更、同時に機能面も向上した。RXやLSと同じブレードスキャン式が新たに採用され、より精密な配光&遮光制御を実現、ハイビームの照射領域も広がっている。
インターフェイスでは、マルチメディアシステムをタッチディスプレイ化。同時に質感の高いウオールナット素材を採用、先進性も上質感もしっかり磨かれている。
今回はワールドプレミアということで、新型ESの日本導入はまだ少し先。計画では、2021年の秋ごろが予定されている。(文:Motor Magazine編集部 神原 久)
レクサス ES300h 主要諸元
●全長×全幅×全高:4975×1865×1445mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1690kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:2487cc
●最高出力:131kW(178ps)/5700rpm
●最大トルク:221Nm/3600-5200rpm
●モーター最高出力:88kW(120ps)
●モーター最大トルク:202Nm
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・50L
●WLTCモード燃費:22.3km/L
●タイヤサイズ:235/45R18