600万円前後のSUVには多彩な個性が揃う。そんな中、キャデラック XT4は「上級コンパクト」のジャンルでキャデラックらしさを巧みに表現しているように感じる。(Motor Magazine2021年6月号より)

都会派クロスオーバーらしい洗練されたエクステリアデザイン

かつて「リタイアした老人が乗るクルマ」と評されたブランドイメージは、もはや微塵もない。「コンパクト」であり「スポーティ」であることで、若々しさを前面に押し立てたデザインへと生まれ変わった現代のキャデラック。今回、新たに日本市場に投入されたXT4は、そのデザイン的な集大成と言えるだろう。

「キャデラックらしさ」という伝統を「キャデラックらしからぬ」サイズ感の中で、みごとに完成させている。

兄貴分となるXT5と比べると全長は20cm以上短く、幅も高さもおおよそ5%ほど縮小されている。しかしその制約は問題ではない。短いオーバーハングとエッジの効いたフォルムは、とてもスポーティだ。ホイールベースは85mmしか短くなっていないのだから、伸びやかさという意味ではXT5を凌いでいるとも言える。

インテリアは都会派クロスオーバーらしい洗練されたデザイン。視界の広さを確保しながらも心地良いパーソナル感が漂う。プレミアムクラスとしての本領を感じさせるのは、ほとんどの部分が上質なレザー素材で覆われているところだろう。ウッドもメタルもすべてが本物。おかげで「プラスティッキー感」は皆無、同価格帯の輸入車SUVと比べても豊かな上級感が味わえる。

画像: 負荷が少ない時には2気筒を休止。燃費性能を高める。

負荷が少ない時には2気筒を休止。燃費性能を高める。

搭載されるパワートレーンは2L 直4ターボで、230ps/350Nmを発生。強大なトルクでグイグイいくタイプではないが、上までしっかり伸びていく感覚はなかなか気持ちいい。耳障りなノイズ類は、BOSEプレミアムサウンドシステムによって、絶妙にキャンセル(消去)されている。裏方的なテクノロジーだが、快適性の向上に確かに役立っているようだ。

ドライブモードは4種類から選択が可能。そのうち「ツーリング」にするとFWD状態となり、身のこなしに軽快感が増す。「スポーツ」では4WDへと切り替わるが、フィーリングが一気に落ち着いたものへと変化するように感じられた。もちろん、プレミアムモデルとしては、後者が似合う。これみよがしではない贅沢な時間の流れを、ゆったりとした気分で楽しみたい・・・そんな1台だ。(文:Motor Magazine編集部 神原 久/写真:井上雅行)

キャデラック XT4 スポーツ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4605×1875×1625mm
●ホイールベース:2775mm
●車両重量:1760kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1997cc
●最高出力:169kW(230ps)/5000rpm
●最大トルク:350Nm/1500-4000rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・61L
●タイヤサイズ:245/45R20
●車両価格(税込):640万円

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