2021年6月1日から改正・食品衛生法が施行され、車種の区分なくキッチンカーの設備に新たな基準が設けられる。コロナ禍の昨今においてキッチンカーの役割は大きく、今回の法改正でメニューの更なる充実も期待できる。では昭和時代から続く伝統的な石焼き芋販売車に、今回の法改正はどのような影響があるのだろうか。

石焼き芋販売車は調理設備を積んでいないが、加熱調理していいのか?

2021年6月1日から施行される改正・食品衛生法の目新しい点は、車内で調理を行うキッチンカーの設備を規定し、それにより実施できる調理手法や料理の取り扱い数が決まることだ。ではキッチンを搭載していない石焼き芋販売車は、今後営業が出来なくなるのかというと、そんなことはない。そもそも石焼き芋販売車は「食品衛生法の対象外」だからだ。

詳しく言えば、食品衛生法において「農作物を単純に加熱」することは調理と見なさない。これが石焼き芋販売車が存在できる、法律上の大きなポイントだ。ただし食品衛生管理者の資格は必要なので、所持していない場合は最寄の保健所の講習会に参加しなければならない。

さつまいもの加熱が調理とみなされないため、石焼き芋販売車が食品衛生管理法の対象外であることは、実は石焼き芋販売車に大きなビジネスチャンスを生み出す可能性がある。

キッチンカーでは給排水タンクの容量で提供できる料理数を制限されるが、石焼き芋販売車にこの縛りはない。そのため石焼き芋販売車1台で、多品目の加熱済み農作物を販売できる。焼き芋と同時に焼き栗を提供することもできるし、塩味のポップコーンだって提供できる。(塩以外のフレーバー ポップコーンは「調理」と規定されるため、石焼き芋販売車では提供できない)農作物の加熱にも取り決めがあるのは驚きだ。

画像: 食品衛生法において、農作物の加熱処理は調理に当たらない。こんなに美味しく焼けたとしても調理ではない・・・それはそれで寂しい気もするが。

食品衛生法において、農作物の加熱処理は調理に当たらない。こんなに美味しく焼けたとしても調理ではない・・・それはそれで寂しい気もするが。

近頃、石焼き芋販売車の存在感が薄まっているようで寂しい

法律による規制の少ない石焼き芋販売車は低障壁なビジネスだが、都市部では最近、あまり見かけなくなったように思う。その理由は煙と呼び込みの音楽だとされる。繁華街なら煙や宣伝の音楽も大きな問題にならないだろうが、住宅街ではそうはいかない。

煙で洗濯物が汚れる、音楽の音量で赤ちゃんが起きたなどのトラブルとなり、地域の役所にクレームが入ることもあるという。そのため呼び込みの音楽を流さない石焼き芋販売車も増えているそうだ。

石焼き芋販売車の営業が影の薄い存在となりつつあるのは寂しいが、昭和から続く風物詩は今後も続いてほしいものだ。(文:猪俣義久)

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