3Mと同じ血統を持つ5M-GEU。1980年代を代表する名機になる
ソアラ2800GTに搭載された5M-GEU型の解説の前に、トヨタ2000GTに搭載された3M型に触れて置かなければならないだろう。というのも、5M-GEUは、3M型のベースとなったM型の血を受け継いだエンジン、つまり同じ血統なのだ。
1967年5月に発売されたトヨタ2000GTは、名車の誉が高いクルマだが、それに搭載されたのが3M型直6 DOHCユニットだった。ベースとなったのは、当時トヨタの最高峰、かつ最新鋭の直6エンジンであるM型だ。1965年10月に2代目クラウン(MS41型)に追加搭載されたこの2L直6SOHCエンジンは、1998ccの排気量で半球形の燃焼室を持つ。
このエンジンのブロックをベースに、ヤマハがトヨタと協力して初の量産乗用車用DOHCエンジンの設計に取り掛かった。ヘッド回りにはレーシングカー専用と思われていたDOHCを採用して注目された。ヤマハにとっては量産車用のDOHCエンジンの開発は初めての経験であった。
ヤマハとトヨタのコラボレーションで完成した3Mエンジンは最高出力150ps/6600rpm、最大トルク18.0kgm/5000rpmを発生。当時としては並外れた高性能エンジンとなった。実際、トヨタ2000GTは最高速度220km/h(巡航速度205km/h)、0→400m加速は15.9秒と当時の世界トップレベルの性能を実現した。
トヨタ2000GTが生産終了して約10年。久々にDOHCヘッドを搭載したM型が帰ってきた。それが初代ソアラに搭載された5M-GEU型である。ベースになったのは1979年に登場したクラウンやマークIIに搭載されていた2.8Lの5M-EU(SOHC)。そのブロックにアルミ製DOHCヘッドを組み合わせている。そういう意味で成り立ちは3M型と重なるわけだ。
1981年2月に登場した初代ソアラ2800GTに搭載された5M-GEU型エンジンのスペックを見て日本中のクルマ好きが狂喜した。2759ccの排気量から生み出される最高出力は、当時としては驚異の170ps/5600rpm、最大トルクは24.0kgm/4400rpmである。
新しい技術も積極的に採用されていた。当時、DOHCエンジンはオイルタペット調整が難しいと言われていたが、5M-GEU型は世界で初めてラッシュアジャスターをDOHCに採用したのだ。吸排気弁のすき間をスプリングと油圧で自動的にゼロに調整するため、カムとバルブがぶつかるときの騒音が軽減されると同時に、面倒な調整も不要になった。
また、カムシャフトの駆動もチェーンではなくタイミングベルトで行うため、こちらも静粛性向上に大きく貢献した。高級車に載せても違和感のない高性能・高効率エンジンへと変貌を遂げたのだ。
この新世代DOHCを搭載したソアラ2800GTは、モーターマガジン誌のテストで実測198.07km/hの最高速と0→400m加速16.0秒を記録。他車を大きく引き離し、圧倒的な最速国産車となった。高級車や上級スポーツをターゲットに開発されただけに、ATとの相性は抜群に良く、日常域での使用でDOHCの気難しさを感じさせられることはない。
5M-GEU型はソアラに遅れることおよそ半年、2代目セリカXX(1981年7月)、6代目クラウン(同年8月)にも搭載され、高級で高性能な新世代エンジンの代名詞として憧れの存在となっていく。
トヨタ ソアラ 2800GT 主要諸元
●全長×全幅×全高:4655×1695×1360mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1300(1305)kg
●エンジン:直6 DOHC
●排気量:2759cc
●最高出力:170ps/5600rpm
●最大トルク:24.0kgm/4400rpm
●トランスミッション:5速MT(4速AT)
●駆動方式:FR
●10モード燃費:8.9(8.1)km/L
●車両価格(税込):266万7000円(275万円)※1981年当時