2022年シーズンからの参戦に向けてマシンはすでに完成
2020年にWEC世界耐久選手権に新規定のLMHル・マン・ハイパーカーで参戦することを発表したプジョーは、2022年の参戦に向けて2021年2月にはマシンの発表の前にドライバー陣を発表、そして今回、早くもル・マン・ハイパーカー規定のマシンを公開した。トヨタ GR010ハイブリッドを徹底的に研究しつつ、ポルシェやフェラーリ、アウディなどに対しては一歩先んじたかたちで、プジョーの並々ならぬ意欲がうかがえる。
プジョー9X8ハイパーカーは、ル・マン24時間レースを制したプジョー905やプジョー908の後継車にあたるが、ル・マン・ハイパーカー規定に則り、エンジンで後輪を駆動し、120km/h以上での走行時にはモーターで前輪も駆動する4輪駆動としている。
パワートレーンはすでに概要が発表されているハイブリッドパワートレーン「プジョーハイブリッド4 500kW」。これは、2.6L V6ツインターボエンジンと、フロントに搭載された最大出力200kWのモータージェネレーターユニット(MGU)、900Vバッテリーによって構成され、システムの合計出力はLMH規定の上限である500kW(約680ps)を発揮する。
このハイブリッドパワートレーンはプジョースポールとトタルエナジーズで共同で開発されたと発表されているが、そこにはフォーミュラE選手権で2シーズン連続ダブルタイトルを獲得したDSオートモーティブが持つEV技術も活用されたと言われる。
ル・マン・ハイパーカー規定はロードカーとの関係性を強めて、GTカーに近いものとなっているが、その外観は独創的で、これまでのプロトタイプカーやトヨタGR010ハイブリッドとは大きく印象が異なる。
なかでも驚かされるのがリアセクションで、シャークフィンがそびえる一方で、極端に低く抑えられたボディ後端部にリアウイングはなく、スリークな形状となっているということ。
また、3本のラインで形成された前後ライトのデザインは、プジョーの市販車に採用されている「ライオンの爪」をイメージしたものと共通性を感じさせる。これは、ル・マン・ハイパーカー規定のコンセプトである「市販車に近いGTカー」にも合致する。
ちなみに、トヨタ GR010ハイブリッドは3.5L V6ツインターボエンジンで後輪を駆動し、272psを生み出すMGUをフロントアクスルに配置している。
なお、モデル名「9X8」の「9」は、ル・マン24時間レースを制したプジョー905やプジョー908の伝統を受け継ぐ耐久レースカーであること、「X」はハイパーカーの4輪駆動技術とブランドの電動化戦略を象徴するハイブリッドパワートレーンを持つこと、「8」はプジョーの最新モデルであることをそれぞれ示しているという。
2020年9月に新しいLMHル・マン・ハイパーカークラスに参戦することを発表して以来、プジョーはパリ近郊のベルサイユファクトリーで開発に着手、すでに「プジョー 9X8」は検証スケジュールに入っているとも伝えられる。
プジョー 9X8 ハイパーカー 主要諸元
●車両規定:ルマン ハイパーカー(LMH)
●全長:5000mm
●全幅:2080mm
●全高:1180mm
●ホイールベース:3045mm
●エンジン:90度V6DOHCツインターボ+モーター
●排気量:2.6L
●駆動方式:4WD
●後輪駆動:500kW(680hp)90度V6ガソリン内燃エンジン+7速シーケンシャル
●前輪駆動:200kW電気モータージェネレーター+シングルスピードレデューサー
●バッテリー:高密度900Vバッテリー