24バルブV6 DOHCの魅力に加え、ツインターボにより280psを発生
1980年代終盤から1990年代は国産車のパワーウォーズの時代だった。ここに合わせるように登場したのがZ32フェアレディZに搭載されたVG30DETT、及びVG30DEというパワーユニットだった。ともにバンク角60度の24バルブDOHCで、当時の最先端の技術を注ぎ込んだパワーユニットとなる。
基本設計としてはオーバースクエアタイプのボア×ストローク(87.0×83.0)、ペントルーフ形の燃焼室、ボアセンタープラグ配置は共通している。また、吸排気系を片バンクずつすべて独立させた2系統吸排気システムを採用しているのも同様だ。
NVCS(ニッサン・バルブタイミング・コントロールシステム)とNDIS(ニッサン・ダイレクト・イグニッションシステム)の採用も効率的だった。前者は油圧によって吸気側カムプーリーに対してカムシャフトを相対的に回転させ、吸気バルブの開閉時期をコントロールシステム。後者はディストリビューターとハイテンションコードを廃し、ダイレクトイグニッションとしたシステムだ。
パワースペックは、ツインターボ仕様で最高出力280ps/6400prm、最大トルク39.6kgm/3600rpmを発生。これが国産車初の280psとなり、以後の自主規制枠のきっかけになった。ノンターボが230ps/6400rpm、27.8kgm/4800rpmを発生した。
それぞれの違いを細かく見ていくと、まずVG30DETTでは、吸排気効率の大幅な向上と過給に対応するためシリンダーヘッド、シリンダーブロックからピストン、コンロッド、クランクシャフトに至るまで、あらゆる部分について徹底した高性能化を実施していることが挙げられる。
一例としてはオイルによる強制冷却が可能なクーリングチャンネル付きピストンの採用、高回転、高出力化にともないレーシングエンジンで使用される材質にグレードアップしたコンロッドメタルの採用などだ。
結果として高出力ターボエンジンでは一般的に難しいとされる高出力と中低速域での高レスポンスを両立した。これには、コンプレッサーとタービンを異サイズとしたハイブリッド型ターボチャージャーと、インナーフィンタイプのアルミ製空冷式インタークーラーを左右2個装備して、スムーズな過給のかかり方を追求した効果も大きい。
もう一方のVG30DEは、自然吸気エンジンらしいリニアリティと高レスポンスを狙いとし、幅広いユーザーがドライビングの楽しさを味わえる仕様となっている。出力、トルクの向上のため、AD(エアロダイナミック)ポートを採用したのもその一例だ。
これは吸気マニホールドからシリンダーヘッドを通り、吸気ポートの内径までを次第に絞り込んだ形状とすることで、吸気の流速を高め、吸気効率の向上を図ったもの。中低速での効果が大きく、当時の日産のこだわりが感じられる部分だ。
ターボには高出力を、自然吸気にはリニアリティを、というエンジンごとのチューニングも魅力に拍車をかけたといえる。
■VG30DETT 主要諸元
・エンジン型式:VG30DETT
・種類・シリンダー数:DOHC・V型6気筒 ターボチャージャー付
・内径×行程:87.0×83.0mm
・総排気量:2960cc
・圧縮比:8.5
・最高出力:280ps/6400rpm
・最大トルク:39.6kgm/3600rpm
・燃料供給装置:ECCS
・使用燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・72L
■VG30DE 主要諸元
・エンジン型式:VG30DE
・種類・シリンダー数:DOHC・V型6気筒
・内径×行程:87.0×83.0mm
・総排気量:2960cc
・圧縮比:10.5
・最高出力:230ps/6400rpm
・最大トルク:27.8kgm/4800rpm
・燃料供給装置:ECCS
・使用燃料・タンク容量:無鉛プレミアム・72L