ひとつのユニットに、低速用と高速用のギアが接続された2基のモーターを備え、動作モードによって制御を効率的に切り換える独自の構成を備えた駆動システム。しかも、48Vで動くというから驚きだ。前後にユニットを搭載した4モーターの4WDプロトタイプ車を試乗した。(Motor Magazine 2021年8月号より)

巧みな動力伝達機構による簡潔でいて高効率な仕組み

機電一体型eアクスルとは、モーターとインバーター、ギアボックスという電気と機械の部分をひとつのモジュールとしてまとめた駆動ユニットのこと。今回の「DMM(デュアルモーターマルチドライビングモード)eアクスル」は、インバーター一体型モーターを2基、水平対向エンジンのように左右に配置し、その中間にロー/ハイのギアとドグクラッチ、ワンウェイクラッチ、さらにデファレンシャルギアをセットにしている。

モーターはどちらも同じもので、片側がローギアに接続されていて、発進からある程度のスピードまでを担当する。速度が上がってくると、反対側のハイギアに接続されたもうひとつのモーターが駆動を担当する。当然、出力の回転数はハイギア側に合わせて高まるので、ローギア側はワンウエイクラッチにより切り離される。

また、アクセルペダルを深く踏み込んだ場合など、高い駆動力が求められる場合は2つのモーターで同時に駆動する。その時、モーターそのものの回転数はロー側とハイ側それぞれで異なっている。

高速域ではハイギアのみで駆動することになるが、パワーが要求される場合は2つのモーターをドグクラッチで接続して一体化させ、ともにハイギアを介して駆動するモードも備える。

このドグクラッチの接続時、2つのモーターの回転差は電気ゆえ即座に同調させられるのでショックはない。試乗時に聞こえたコツンという音は、スライドするドグクラッチのギアがオーバーシュートしてぶつかって止まるときの音らしい。

ギア比はロー側が13対1でハイ側が8対1程度というからレシオは結構違う。この機構により、1モーター/1スピード式では得られない2モーター/2スピード式のマルチドライビングモードで電力消費を抑えながら効率良く走れる範囲が格段に広げられている。

さらに今回試乗したeアクスルは、48V電源で駆動されている。12Vのリチウムイオンバッテリーを4個直列接続して48Vとして、それを並列に7組配置したバッテリーパックを搭載。シティコミューターのような小さなBEVでは、48Vを採用することにより、相当なコストダウンが見込める。

このDMMeアクスルユニットを作りあげたのは「ユニバンス」という静岡県にあるパワートレーン専門メーカーだ。自動車用のトランスファーケースやギアボックス、各種のギアやシャフトなどを手掛けており、製品企画/デザイン/開発/製造を一貫して手掛けることができる歴史ある会社だ。

今回のプロトタイプモデルはスポーツカーだったが、DMMeアクスルはユニークなアイディアが満載されたパワーユニットだ。これが採用されたシティコミュータやトラックなどの登場が楽しみだ。(文:こもだきよし/写真:井上雅行)

画像: モーターの最大出力は15kW、最大トルクが55Nm。それを1ユニットに2基、前後合わせて4基搭載する。左右シンメトリーデザインで、搭載時のバランスも良い。プロトタイプモデルの車重は約1000kgだという。

モーターの最大出力は15kW、最大トルクが55Nm。それを1ユニットに2基、前後合わせて4基搭載する。左右シンメトリーデザインで、搭載時のバランスも良い。プロトタイプモデルの車重は約1000kgだという。

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