ステアリングワークはスムーズに。必要な分を切り込み、そして戻す
ブレーキングからヒール&トウで減速を終えた後に待ち受けている操作はコーナリングだ。ここで適切な舵角を与えながら進入し、ステアリングホイールを戻しつつアクセルオンでコーナーから脱出することがスポーツドライビングの醍醐味のひとつだ。
コーナーのR(半径)によってステアリングワークを変える必要が出てくる。緩いコーナーなら両手を9時15分の位置から持ち替えずに切り込むのが正解だ。レーシングサーキットならば、おそらく手を持ち替える必要はない。そして持ち替えない方がテールが滑ったときのカウンターステアも素早く行える。逆に切り込みにしろ、カウンターステアにしろステアリングホイールを持ち替えなければならないほど回すのは、失敗ということになる。
では、もっとRがきつかったり、咄嗟の判断で切り足ししたい場合はどうするか? ジムカーナやラリー、ダートトライアルなどを行うコースで、ターンに近い急角度コーナリングが多いパターンだ。
まず基本は、教習所で教えられるクロスハンドルだ。右に切るならば、左手が4時の位置に来たときに右手を10時の位置に迎えに行って引く。実際にタイトな切り返しの続くコーナーでは使われることもある。
ただ、クロスハンドルは持ち替えるときに片手になる瞬間があり不安定になる。やはりできるだけステアリングを持ち替えたくない。クロスハンドルでカウンターステアを当てる場合も、持ち替える瞬間に回転ムラができて的確な操作をしづらい。
そこで、もうひとつの方法を解説しよう。たとえば右コーナーであれば、あらかじめ右手をステアリングの12時の位置まで移動して引く。左手は9時の位置のまま手の中でステアリングを滑らせる。そして、右手が3時の位置に来たときに、左手を9時の位置でホールドして両手で切り足す。そうすると自然な感じで270度程度まで切り込めるから、きつめのコーナリングまでは対処できるだろう。
さらにこの切り方だと、ステアリングを直進状態に戻したいときには、3時の位置にある左手を6時の位置まで一気に戻せばいいことになり、カウンターステアを当てたいときにも、ここから右手を3時の位置でホールドし左に切り込めるから合理的だ。
もうひとつ、ステアリングの切り方としては送りハンドルという方法もある。レースなどで高速コーナーが続く場合は、なるべく腕を大きく動かさず、正しい姿勢を保つことで横Gを感知し、視線も安定させたいときには有効と言われることもある。
これは例えば右コーナーだったら、右手を1時くらいの位置に持って行ってステアリングをホールドし、左手の中を滑らせるように引き下げる。続いて、左手を10時くらいの位置まで持ち上げ、さらに右手は1時くらいの位置まで迎えに行き、引き下げるという操作になる。両手の作動範囲を大きくすれば、それだけ速いスピードでステアリングが送れるようになる。
ただ、この方法だと、大きく切り込んだステアリングホイールを直進状態に戻す場合、セルフアライングトルクに頼らざるを得ないこともあり、あまりオススメはしない。ただ、要は的確に回せればいいのだから、これがいけないということでもないだろう。実際にドリフト走行ではセルフアライニングトルクを使ってカウンターを当てるドライバーもいる。
実はステアリングワークというのは、切り込むときよりも戻す時の方が重要な面がある。戻し遅れは致命的な失敗だ。FRで適度にカウンターステアが当たっていても、テールスライドが収まったのに合わせてぴったり直進状態に戻さないと、いわゆる「おつり」を食らってしまうし、FFの場合はステアリングを意識的に戻してアクセルを踏み込まないとイン側に乗り上げてしまう場合もあるだろう。
そういう場面で、ステアリング操作を行うときには、切り込むのと同時に、いかに直進状態に戻すか?を考えながら行い、無意識にできるようになることが必要だ。
ステアリングワークに関連して、タイヤにはグリップしやすい「おいしいところ」があることも認識したい。これはタイヤの限界域では、ステアリングホイールをおおよそ180度くらい切り込んだところまでだろう。
舵角を与えるとタイヤはコーナリングフォースという曲がるための力(横向きの力)を発生する。これは、あるポイントの舵角まで増えていくが、それを越えると低下する。この段階になってステアリングを切り足すとアンダーステアが発生するのだ。(文:Webモーターマガジン・飯嶋洋治)