排気量を400ccアップして全域でトルクが向上した
トヨタとの共同開発で生まれ、スバルにとっては初のチャレンジであるFRライトウエイトスポーツBRZの誕生から約9年。いよいよその第2章が始まる。
これまで毎年のようにアップデートされ、時間の経過とともに洗練されていった。とりわけ2016年7月の大幅改良で、かなり走りが進化したことを思い出す。
新型はさらに大幅に進化していた。アルミルーフの採用をはじめ、その他の積み重ねが効いて、これまでも低かった重心高は、さらに4.3mmも低くなったというから驚く。さらに、前席のカップルディスタンスを近づけるなどヨー慣性モーメントの低減も図っている。
リフレッシュされた外観は、見た目のアクセントになっているヘキサゴングリルの脇に配された空力アイテムには、鮫の肌を模したという独自の空力テクスチャーを採用するなど、新しい試みも見られる。新たに設けられたフロントアウトレットも、レースで得たノウハウを活かしたものだ。
インテリアはスポーティさに上質さが加わった。シートに座ってみただけでもその進化幅の大きさがうかがえ、走り出してより一層、その成果を実感する。
初代のFA20型も自然吸気ボクサーエンジンとしていい仕上がりだったが、モアパワーを期待する声も少なくなかった。そこで新たに開発されたのがFA24型だ。型式からすると既存ユニットの改良版のような気もするが、ほぼ新設計されており、同型式のエンジンの集大成とスバルでは位置づけている。
むろんパワーアップには過給機の追加という手法もあり、実際それも検討されたようだが、この排気レイアウトにターボチャージャーを追加するのはスペース的にも厳しい上、何よりキャラクター的に自然吸気で高回転まで気持ち良く回して楽しむのが似合うクルマであることを重視したという。
FA24ではFA20の86mm×86mmから94mm×86mmにストロークを変えずボアを拡大し、全域でトルクの向上を図った。これだと通常は最大回転数が落ちてしまい出力を求めにくくなるのだが、各部の改良により最高到達回転数の7500rpmは変えずに、出力も28ps向上している。
肝心のトルクも、FA20のピーク値に約2000rpmで到達し、そのまま7000rpmまでほぼフラットにトルクを維持する。その恩恵は、低回転域で扱いやすく、こうしたサーキットを全開で走るとよくわかる。コーナー立ち上がりで路面を蹴る感覚が初代とはだいぶ違って、ストレートエンドでの車速がおおむね10km/hほど速い。
この差は小さくない。エンジン自体も部品の軽量化等が効いて音や振動も低減しているのも進化点のひとつだ。
アクセルレスポンスはあえてゲインを控えめにして、リニアな味付けとされている。加速側だけでなく減速側の味付けも絶妙で、ピッチング挙動で雑味が出ないように、あまりストンと落とさず、スーッと荷重がフロントに移動するようにセッティングされているので、コーナリング中にアクセルをオンオフしても挙動が乱れにくい。成熟した味付けだ。