初日にトップに立ったヌーヴィルが独走、ホームラリーで今季初勝利
初めての母国でのWRCをティエリー・ヌーヴィルが制圧した。
勝因は特殊なターマックステージに対する経験。イープルラリーはWRCで初開催とはいえ、ヨーロッパラリー選手権として過去55回の開催実績を誇る伝統的なイベント。ヌーヴィルは過去何度もこのラリーに出走しており、2019年にはヒュンダイとともにWRカーでゲストクラスに参戦。他のターマックラリーにはない、道幅が狭く、路面のグリップチェンジが激しいこのラリーの特性を完璧に熟知していた。
ラリーが始まると、ヌーヴィルはオープニングの3ステージこそチームメイトたちに僅かに遅れをとったものの、初日のSS4で首位に立つと、僅かなミスでパンクやコースアウトの危険を孕むSSで安全マージンを取りながらの余裕の走行。
そのまま首位を譲らず、ラリー最終日にイープルから300km離れたスパ-フランコルシャン・サーキットをベースに設定されたふたつの特設ステージも慎重に走り切ってフィニッシュに飛び込んだ。
「地元開催でプレッシャーはあったけど、チームが完璧なクルマを用意してくれた」とようやく訪れた今季初勝利を喜んだヌーヴィルは、これでトヨタのエルフィン・エバンスと並んでランキング2位に浮上。ヒュンダイはヌーヴィルと同様にイープルでの経験豊富なブリーンも2位を確保し、マニュファクチャラーズ選手権でトヨタとの差を大きく縮めてきた。
トヨタは3〜5位の完敗、勝田は大クラッシュ喫す
今シーズン、7戦6勝と圧倒的な強さを見せてきたトヨタが完敗を喫した。
参戦するドライバー4人はいずれもイープル初体験。チームとしてこのラリーに出場したこともなく、ラリー序盤の初期セッティングやタイヤ選択の的確さでヒュンダイに遅れをとったことは間違いなさそうだ。
加えてランキング首位のセバスチャン・オジェと2番手のエバンスを苦しめたのはスタート順。通常のターマックラリーなら出走順の早いドライバーが有利となるが、イープルのステージの路面に大量のダストがあり、グラベルラリーさながらに掃除役を強いられてしまったのだ。
グリップ感のない路面に苦しんだヤリスWRCは、ラリー前半の遅れを最後まで取り戻せず、出走順で比較的有利だったロバンペラを筆頭に3〜5位を確保するに留まった。日本の勝田貴元も土曜日に激しいクラッシュを喫してリタイアと、トヨタにとっては厳しい結果となった。
次戦は9月9日から12日にかけて、ギリシアで開催されるアクロポリス・ラリー。「神々のラリー」と呼ばれるこのイベントは、1951年に初めて開催され、WRC初年度の1973年からシリーズに組み込まれた歴史あるラリーで、今年8年ぶりにWRCに復帰することになった。競技は過去にもラリーの中心となった、ギリシア中部のラミアをベースに行われる。ステージはグラベル(未舗装路)で、大きな石が転がる荒れた路面も多くある、非常に過酷なラリーだ。
2021年 WRC第8戦イープル・ラリー・ベルギー 結果
1位 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ i20クーペ WRC)2h30m24.2s
2位 C.ブリーン(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+30.7s
3位 K.ロバンペラ(トヨタ ヤリス WRC)+43.1s
4位 E.エバンス(トヨタ ヤリス WRC)+49.6s
5位 S.オジェ(トヨタ ヤリス WRC)+55.8s
6位 O.タナック(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+3m46.5s
7位 Y.ロッセル(シトロエン C3 ラリー2)+12m14.9s
8位 P.クラッコ(シュコダ ファビア ラリー2 Evo)+13m05.9s
9位 F.クレイム (フォルクスワーゲン ポロ GTI R5)+13m13.8s
10位 V.フェルシューレン(フォルクスワーゲン ポロ GTI R5)+13m31.1s
2021年 WRC ドライバーズランキング(第8戦終了時)
1位 S.オジェ(トヨタ) 162
2位 E.エバンス(トヨタ) 124
2位 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ)124
4位 K.ロバンペラ(トヨタ) 99
5位 O.タナック(ヒュンダイ)87
6位 勝田貴元(トヨタ)66
2021年 WRC マニュファクチャラーズランキング(第8戦終了時)
1位 トヨタ 348
2位 ヒュンダイ 307
3位 Mスポーツ フォード 135