FCEVに加え、5年間で6モデルのBEVを市場投入
また、今回はオフロード走行も試すことができ、雨の降りしきる厳しいコンディションの中でも、走破性の高さはよくわかった。テレインレスポンスは「砂地・砂・利雪」、「泥・轍」、「砂」、「岩場」と路面の選択肢が充実しており、適宜制御してくれるので、アクセルペダルを踏めば、クルマ任せで前に進んでいける。
加えて、路面の大きな段差を乗り越えても、衝撃があまり伝わってこないことにも感心する。これには、ラダーフレームの最強クラスのクルマに対して約3倍のねじり剛性を誇るという新開発のモノコックも効いているに違いない。
さらに、あたかもボンネットが透けて見えるかのようなクリアサイトグランドビューや、センサーで水面との距離を画面表示してくれるウェイドセンシングのような先進機能も重宝する。渡河水深が900mmというのもディフェンダーらしいところである。
実は、ランドローバーは、そんなディフェンダーをベースとするFCEVの存在も明らかにしたばかりで、2021年末にプロトタイプでの実証実験を本国で始める旨が報じられた。
これにはデルタモータースポーツ、AVL、マレリ、英国電池産業化センターという世界有数のR&Dパートナーが関わっている。
同門のジャガーは2025年以降にBEV専門となることを宣言し、ランドローバーもモデルは明かにしていないが、2024年を皮切りに5年以内に6車種のBEVを順次ラインナップを揃えていくとしている。ひいては全体として2039年までにサプライチェーン含めビジネス全体の排出ガスゼロを目指し、それに向けて電動化を進めていく、というのが今後のロードマップである。
一方、近い将来の話では、SUV専門メーカーとして多様な要望に応えるべく、近年かなり細かくバリエーションを刻んできたが、今後は、少し整理する考えもあるという。ひとまずディフェンダーに関しては、これで役者が出そろい、冒頭で述べたとおり、納車に時間を要する状況は当面続きそうなので、興味のある人は早めに行動を起こした方が良さそうだ。(文:岡本幸一郎/写真:井上雅行)
ランドローバー ディフェンダー90 HSE 主要諸元
●全長×全幅×全高:4510×1995×1970mm
●ホイールベース:2585mm
●車両重量:2100kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1995cc
●最高出力:221kW(300ps)/5500rpm
●最大トルク:400Nm/2000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・90L
●WLTCモード燃費:8.3km/L
●タイヤサイズ:255/60R20
●車両価格(税込):758万円
ランドローバー ディフェンダー110 X D300 主要諸元
●全長×全幅×全高:4945×1995×1970mm
●ホイールベース:3020mm
●車両重量:2420kg
●エンジン:直6 DOHCディーゼルターボ+モーター
●総排気量:2993cc
●最高出力:221kW(300ps)/4000rpm
●最大トルク:650Nm/1500-2500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・89L
●WLTCモード燃費:9.9km/L
●タイヤサイズ:255/60R20
●車両価格(税込):1171万円
ランドローバー初のBEVは2024年にデビューする予定だ
2036年までに排出ガスを実質ゼロを目指す
ランドローバーブランド初のBEVは2024年に発表すると表明された。また今後5年間の間に6モデルのBEVを市場へ投入、さらには全ラインナップの約60%をゼロエミッションカーにしていくという。ディーゼルエンジンについては2026年に廃止するとしている。ランドローバー全体では、 2036年までに排出ガスを実質ゼロにするという。また日本市場では、現在全国に47名いるEVスペシャリストを2023年までに100名体制に拡充し、正規ディーラーや充電設備を完備、充電設備の提携先も拡大される計画だ。