ついに導入されたランドローバー ディフェンダーのショートボディ「90」、そしてロングボディ「110」に直6ディーゼルエンジン+48Vマイルドハイブリッド(MHEV)が追加されるなど、ラインナップがここにきて充実してきている。さらに本国では2024年にブランド初の電気自動車・BEV投入も発表されている。ここでは、90の2L直4ガソリンターボ仕様と110の3L 直6ディーゼルターボ+MHEV仕様を乗り比べてみた。(Motor Magazine2021年9月号より)

90の最小回転半径は5.3m。小まわりの効くディフェンダーだ

一方の90は、110に対して全長とホイールベースが435mm短縮されて、ガソリンターボ仕様のみ導入される。試乗したのはエアサスペンションとオールシーズンタイヤを装着したHSEグレードだ。

かつてはポピュラーだった2ドアのSUVというのは、今はほとんど見なくなったが、デザイナーは90のプロポーションこそディフェンダーを象徴する「意図しているデザイン」と述べているという。たしかにこの原寸大のオモチャの自動車のようなユニークな容姿は、110を凌ぐインパクトだ。

ただし、実用性の面ではいろいろ制約もある。横開きのテールゲートは110と同じだが、開けると広大な荷室の110とは違って、ゴルフバッグを横積みできない程度の広さとなる。リアシートに前後スライド機構もなく、荷室を拡げるには後席を倒すしかない。

フロントドアは110より20cmほど長いので、駐車する場所も考える必要がある。リアシートへのアクセスは、この大きなフロントドアを開けて前席の肩のレバーを引くと背もたれが倒れ、さらにスイッチを押すと座面が前端までスライドして乗降するためのスペースが出現するのだが、ステップの地上高が高いこともあり、正直、乗り降りしやすいわけではない。

とはいえ、乗り込んでしまえば後席の居住空間は横に3人座っても大丈夫なほどの広さで、膝前もコブシを縦に3つ分超を入れられるほどのクリアランスを持つ。座面のクッションもたっぷり確保されているので、座ってしまえば苦にならない。

逆に、もう少し狭くして前後スライドを設けるなどして、荷室を広くしてくれても良かったのではという気もするが、基本的に2シーターとの割り切りが賢明といえそう。とにかくこのデザインに価値があると考えたほうがよい。

走りは、ショートホイールベースで小まわりが利き、110より圧倒的に取り回しの面で有利だということは想像どおりだ。110の最小回転半径が6mを超えるのに対し、90で5.3mにとどまるといえば、ご想像いただけよう。

外見から想像するよりも走りが軽やかな感覚も、110のガソリンを上回る。とはいえキビキビというほどではなく、あまり俊敏だとそれはそれで似合わないわけだが、鈍重ではないということだ。

ショートホイールベースで重心も高いので、コーナリングの安定性はあまり高くない。それほど路面の荒れていない一般道を走ってもピッチングしやすいのは、見た目のバランスからイメージするとおりだ。今回残念ながら高速道路を走れなかったが、それなりに跳ねることも覚悟しておいた方が良いだろうが、しかし、このデザインのクルマに乗れると思えば許せるという人は大勢いるに違いない。

日本に導入されるモデルのエンジンは、ガソリン仕様のみとなる。プロダクトマネージャーの藤井氏によると、「ディーゼルも選べるにこしたことはないのは承知しているが、諸々のコストを考慮して、ひとまずはガソリンのみとした」という。

車両重量は意外なほどに110よりもだいぶ軽いので、加速力でも上回るかと思っていた。しかし、110のほうが低いギアで引っ張るシフト制御とされているせいか、同じエンジンでもやや90の方が控えめな印象を受けた。おそらくは燃費面にも配慮した制御としたのだろう。

90の導入を待っていた人は大勢いたようで、デビューフェアではディフェンダー全体のうちで販売比率がほぼ半分に達したとのこと。現状でも2割強を占めているが、レンジローバー イヴォークも途中からは2ドアが勢いを失ったこともあり、ディフェンダーも時間が経過するとこの比率は変わるだろう。とはいえコアなファンが多いのもこの世界の常。ゆくゆくはリセールで110を上まわることも十分に考えられるのではないだろうか。

画像: ディフェンダー90HSE。全長4510mm(含スペアタイヤ)、ホイールベース2585mm、車両重量2100kg。

ディフェンダー90HSE。全長4510mm(含スペアタイヤ)、ホイールベース2585mm、車両重量2100kg。

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