衝撃的なあの計画、「Reimagine」発表と同日、日本ではジャガー Fペイスの2021年モデルの受注が始まった。新設定されたマイルドハイブリッド(MHEV)の2Lディーゼルターボ搭載車に乗って思ったことは・・・。(Motor Magazine2021年9月号より)

2030年に消滅するジャガーブランド

2021年の2月にジャガー・ランドローバーが発表した新たなグローバル戦略「リイマジン(Reimagine)」。ジャガーは、2020年代半ばまでにドラスティックなブランド改革を行い、2030年には完全なる「ノーパイプ ブランド」になると宣言されてしまった。

半ば予想されていた内容だったとは言うものの、涙滴をグスンとこぼすほかなかった。そんな目論見もあって開発が進んでいたはずのフラッグシップサルーンXJの次世代もなかなか出すに出せなかったのか、と残念な得心もする。

もっとも、ジャガーのブランディングがそのプロダクトの出来が良かったにもかかわらず思ったように上手くいっていないことも確か。ならばいっそ、というピュアEVブランド化は、好調なブランドの攻めの戦略とはまた違って、瀬戸際の一手というべきか。

それはともかく、マイナーチェンジしたFペイスに乗ってみれば、ホントにこの上出来な走りを金輪際捨ててしまうのかと、英国もしくはインドに向かって叫びたくなったほどだった。

画像: 2016年のデビューながらクーペライクなフォルムは今見ても新鮮だ。タイヤサイズは255/50R20。

2016年のデビューながらクーペライクなフォルムは今見ても新鮮だ。タイヤサイズは255/50R20。

動的性能はピカイチでもMHEVはこれが最後か?

試乗グレードはD200。最大トルクは旧型と同じ430Nmながら最高出力を204psへと引き上げ、そこに8速ATと48VシステムのBSG(ベルト駆動スタータージェネレーター)を組み合わせた、いわゆるマイルドハイブリッド(MHEV)である。

思い起こせばジャガー初のSUVとして、販売躍進の期待を一身に背負って年に登場したのがこのFペイスだった。ジャガーらしくスポーツカーのようなクーペSUVフォルムに期待を裏切らぬ運動性能を備え、なおかつスペースユーティリティにも優れていた。

専門家の評価も著しく高かったように記憶する。それが大ヒットへと至らないあたりが、自動車ビジネスの難しさというべきか。ある意味、このFペイスと妹分Eペイスの大ヒットさえあれば、ランドローバーと同じくらいのテンポで電動化が進んだであろうに。

けれども、そんな不利な状況下においても開発陣は手を抜かずFペイスのマイナーチェンジをやり遂げたようだ。イメージを刷新するほどのデザインチェンジがなかった代わりに、中身、とくにインテリアと走りは大いに進化した。

中でも動的パフォーマンスにはいまだ心が躍るSUV勢の一角をキープしたと言っていい。そもそもFペイスはスポーツサルーンXFのSUV版であり、エンジンはフロント縦置きでリア駆動を基本パッケージに4WD化したものだ。前後重量配分に優れ、走り込めば走り込むほどに車体との一体感が増していくという、同セグメントではBMW X5に匹敵するユニークなドライバビリティが特徴の一台だった。

その特色がマイナーチェンジによって一層、磨き抜かれた。パワーアップしたインジニウムディーゼルターボエンジンとともに、街中から高速道路、そしてワインディングロードまで、オールマイティに楽しむことができた。

何より感心したのが、長距離ドライブでの懐深いドライブフィールだ。都合700km近くも試乗したが、直進安定性はもちろんのこと、緩急カーブでの身のこなしがたまらなくいい。中でも高速道路から降りる時のインターチェンジ。ちょっと減速が足らないような状況で曲がっていく時の気持ち良さったら!

フロントサスペンションの沈みようが両手に生き生きと伝わり、それを後輪とつながったドライバーの腰で支えながらクリアする。まさに良くできた後輪駆動のビヘイビアであった。

前期型でも秀逸だったのは電子制御連続可変ダンピングのアダプティブダイナミクスで、これは絶対にチョイスすべきオプションなのだが、そこは後期型となった新型Fペイスでも変わらない。スムーズさと手応えの良さを両立するしなやかで懐の深い走りの源でもあるからだ。いやはやこれで最後かと思うと、実にもったいない。(文:西川 淳/写真:赤松 孝)

画像: 48Vベルト駆動スターターによるMHEVを採用。加速時のピックアップはなかなか鋭く、その恩恵を感じる。

48Vベルト駆動スターターによるMHEVを採用。加速時のピックアップはなかなか鋭く、その恩恵を感じる。

ジャガーFペイスR-ダイナミックSE D200主要諸元

●全長×全幅×全高:4755×1935×1655mm
●ホイールベース:2875mm
●車両重量:2010kg
●エンジン:直4 DOHCディーゼルターボ+モーター(48Vベルト駆動スターター)
●総排気量:1997cc
●最高出力:150kW(204ps)/3750-4000rpm
●最大トルク:430Nm/1750-2500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・60L
●WLTCモード燃費:14.3km/L
●タイヤサイズ:255/50R20
●車両価格(税込):810万円

ジャガー、脱内燃機関への次の一手はPHEVモデルの導入加速か

画像: EペイスPHEV(右)は2021年5月に20台限定で受注開始(左はFペイスPHEV、中央はIペイス)。

EペイスPHEV(右)は2021年5月に20台限定で受注開始(左はFペイスPHEV、中央はIペイス)。

PHEVの2台が日本上陸に向け待機中

ジャガーが日本国内で展開している電動SUVラインナップは、MHEV(マイルドハイブリッド)のEペイス、 Fペイス、そして100%BEVのIペイス。一方、イギリス本国ではすでにPHEV(プラグインハイブリッド)のFペイス P400e PHEV、Eペイス P300e PHEVも発表済みで、2021年内に欧州で発売開始される。

ちなみに、P400eのシステム最高出力/最大トルクは404ps/65.3kgm、P300eも309ps/55.1kgmと強力だ。すでに2021年5月にはEペイス P300e PHEVの国内導入モデル(特別仕様車)として「Eペイス ローンチエディション」の予約受注開始(20台限定)を発表している。

本格的な国内上陸はFペイス P400e PHEV、Eペイス P300e PHEVともに2022年を待つことになりそうだが、2030年の100%BEV化に向けて、すでに着々と手は打たれていると言えよう。(文:Motor Magazine編集部 阪本 透)

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