2009年、4シータークーぺ「アウディA5」のオープンモデル「A5カブリオレ」が登場した。オープンカーにメタルルーフ化の波が押し寄せる中、あえてソフトトップを組み合わせたことは大きな話題となった。アウディの狙いはどこにあったのか、それはどのように実現されていたのか。ここではモナコで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年5月号より)
迷うことなくソフトトップを選択
「アウディのカブリオレは、当然ソフトトップルーフを採用します。プレミアムクラスの自動車にとって、デザインは選択理由の大きな部分を占めます。カブリオレのようなエモーショナルなモデルにとっては、なおさらその傾向が強いのです」
A5/S5カブリオレのプロダクトマーケティング担当、シルケ・ホファー女史は、モナコで行われたプレゼンテーションの場で堂々とそう言い切った。これが最大のライバルであるBMW3シリーズカブリオレをはじめとする競合車たちがリトラクタブルハードトップを採用していることを念頭に置いた発言であることは言うまでもない。
アウディがソフトトップにこだわったのはスタイリング、そして機能性が理由だという。実際、リトラクタブルハードトップはほとんど検討すらされなかったというのだ。
その選択が正しかったということは、写真を見ていただければ一目瞭然だろう。A5カブリオレのスタイリングは、まさしく絶品だ。そもそもショートオーバーハング&ロングホイールベースを実現する新しいプラットフォームを土台に、美しいクーペボディを構築しているA5クーペは、ソフトトップルーフの採用で艶かしさにさらに磨きをかけた。
ソフトトップの布地とボディの金属、LEDといったハイテクイメージのディテールとクラシカルなボディラインなど、一見相反するものが絶妙に溶け合って、際立った美しさが演出されているのだ。
トップを開けた状態がカッコ良いのは当たり前。しかしA5カブリオレは、閉じた状態も美しく、そして絵になる。その存在感は何とも贅沢なものである。