2009年、4シータークーぺ「アウディA5」のオープンモデル「A5カブリオレ」が登場した。オープンカーにメタルルーフ化の波が押し寄せる中、あえてソフトトップを組み合わせたことは大きな話題となった。アウディの狙いはどこにあったのか、それはどのように実現されていたのか。ここではモナコで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年5月号より)

オープン時でも320Lの収納スペースを確保

しかも、その美しさは高い実用性と両立されている。このA5カブリオレ、2名分の快適なリアシートを用意するばかりでなく、十分なラゲッジスペースをも確保しているのである。その容量は通常時の380Lに対して、収納性に優れたソフトトップを活かしてオープン時でも320Lを確保。さらに分割可倒式のリアシートを折り畳めば、容量は750Lにまで拡大し、最大1.76mの長尺物まで飲み込んでくれる。

オープンにする際にはトップ収納スペースにかかる部分に荷物が積まれていないことが前提となるが、荷物センサーの内蔵によって手動式のカバーを引いておくなどの必要はなくなり、開閉可能な状態であればいつでもワンタッチでソフトトップを開け放つことができる。開けようと思ったらカバーを引き忘れていて、一旦クルマを降りてトランクリッドを開けてという面倒な思いはしなくて済むというわけである。

電動開閉式ソフトトップルーフの採用や、それに伴うボディ各部の徹底的な補強、さらにはポップアップ式ロールバーの搭載などによって、車重はクーペに対してざっと150kgほど増えている。日本仕様として用意されるのはクーペと同じ3.2FSIクワトロ。そうなると、やはり走りっぷりは気になるところだ。

率直に言って、出足にはさすがに重さの影響を感じなくはない。しかし、動き出してしまえばあとはスムーズ。アウディバルブリフトシステムを採用した最新のV型6気筒3.2L直噴ユニットは回すほどに活気づいて、気持ちよく速度を伸ばしていく。

それにはクーペの6速ATに代えて搭載された7速Sトロニックの効果も大きい。トルクコンバーターによるトルク増幅効果は望めないものの、ワイドなギア比でエンジン出力をダイレクトに伝えるこのギアボックスが、走りのキレ味を高めている。

しっかりボディを作り込んでいることは、正確性の高いフットワークや上々の乗り心地から容易に想像できる。ステアリングの手応えに曖昧さは皆無だし、大きめの段差を乗り越えてもボディはミシリとも言わないのだ。

試乗車が19インチの大径タイヤ&ホイールを履いていたにもかかわらず、これだけ上質な走りを可能にしたことには、電子制御式減衰力可変ダンパーを含むアウディドライブセレクト(ADS)の恩恵も小さくないはずである。オプションで20インチまで用意された大径タイヤを履くなら、これは必須の装備と言える。

一方、標準の17インチならADSなしでも快適な乗り味を得られたということも念のため記しておこう。日本仕様の概要は未定だが、個人的にはゆったり走りたいカブリオレだけに、これをベストと推したい。

その姿は美しく、不満の出る余地のない実用性を備え、走りも上質。ハイエンドなカブリオレを求めるユーザーにとって、この上ない選択となりそうなA5カブリオレの日本導入は、秋以降に予定されている。(文:島下泰久)

画像: 定員は4名。後席もA5クーペと同じ快適な空間を確保する。50:50の分割可倒式リアシートを倒せば1760mmもの長尺物も収納可能。

定員は4名。後席もA5クーペと同じ快適な空間を確保する。50:50の分割可倒式リアシートを倒せば1760mmもの長尺物も収納可能。

アウディ A5カブリオレ 3.2FSIクワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4625×1854×1383mm
●ホイールベース:2751mm
●車両重量:1600<1580>kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3197cc
●最高出力:195kW(265ps)/6500rpm
●最大トルク:330Nm/3000-5000rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:4WD
●EU総合燃費:10.5km/L
●最高速度:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:6.9秒
※EU準拠

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