クルマの性能を表す重要な指標に「操縦安定性」がある。しかし「これが操縦安定性だ」と言い切れるものではなく、ボディやサスペンションなどの複合的な要因で決まる。そしてクルマの使用用途によって求められるものが違う、とも言える。ここではそこをちょっとだけ突っ込んで解説してみよう。

操縦安定性とはちゃんと走り、止まり、曲がれる性能の総称

画像1: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

クルマ専門誌を読んでいると「操縦安定性」という言葉が出てくることがある。考えてみると漠然とした言葉であるのだが、これが優れているということは安定した姿勢で走り、止まり、曲がれる特性といえるだろう。

画像: 加速、減速、コーナリングとあらゆる挙動がクルマに発生する。もちろん天候を問わずにだ。それをどうバランスさせるかがクルマ作りの要諦だ。

加速、減速、コーナリングとあらゆる挙動がクルマに発生する。もちろん天候を問わずにだ。それをどうバランスさせるかがクルマ作りの要諦だ。

もう少し具体的に見ていこう。加減速時を考えると、一般的なサスペンションであれば車体に働く慣性力によって、加速時にリアが沈み込むテールスクォートという現象が起きる。一方でブレーキング時にフロントが沈み込むノーズダイブという現象が起きる。この2つの動きをピッチングという。

また、一定速度でスラローム走行を行うと、サスペンションのアウト側が沈み、イン側がリフトするという挙動を繰り返す。これはローリングとヨーイングが起きているとも言える。こうした場合、サスペンション性能が低い(=操縦安定性が低い)とドライバーに不安感を与えるだけでなく、挙動の乱れによって事故につながる場合がある。

画像: レーシングカーでは居住性をある程度無視しても、走行性能を追い求めることができる。それはタイヤの性能を生かし切るためのものだ。

レーシングカーでは居住性をある程度無視しても、走行性能を追い求めることができる。それはタイヤの性能を生かし切るためのものだ。

操縦安定性はサスペンションの問題だけでなく、クルマ自体の重心位置やタイヤの性能などが複雑に絡み合っている。いくら設計の優れたサスペンションを持っていたとしても、重心の高いミニバンやワンボックスカーはロール過大により操縦性安定性が低くなりがちだ。もちろん、タイヤのグリップ力やコントロール性によっても違ってくる部分だ。

画像2: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

もうひとつ、操縦性の話になると出てくるのが「アンダーステア」、「オーバーステア」という言葉だ。

アンダーステアとは、一定の円を描いてクルマが旋回しつつスピードを上げた場合に、だんだんと大回りになっていく挙動のことを言う。もしこの状態になってもスピードを落とすことでタイヤのグリップを回復・アンダーステアも解消できるため、一般的な乗用車の場合、弱アンダーステアが適していると言われる。

同じ条件で走行していったときに、小回りになっていくのがオーバーステアということになる。この状態は最終的にテールを振り出してスピンとなり、コントロールできなくなる。ちなみに「ニュートラルステア」というものもあるが、これは常に一定の円を描けるということであり、これを実践するのは難しい。

レーシングカーなどは「速さ」に特化した操縦安定性を求められるが、市販乗用車で追求しすぎると乗り心地などと相反する部分が出てくるので、バランスが重要となる。乗用車用としての良いサスペンションとは、操縦安定性と乗り心地の妥協点がポイントと言える。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)

This article is a sponsored article by
''.