ヨコハマの新スタッドレスタイヤ「アイスガード 7」のメディア向け試乗会が、2021年2月に北海道旭川で開催された。その進化をモータージャーナリストの日下部保雄氏がチェックした。

氷上ブレーキ性能を従来品比で14%向上

画像: アイスガード 7のメディア向け試乗会は、北海道旭川市にある横浜ゴムのTTCH(北海道タイヤテストセンター)で2021年2月に行われた。

アイスガード 7のメディア向け試乗会は、北海道旭川市にある横浜ゴムのTTCH(北海道タイヤテストセンター)で2021年2月に行われた。

温暖化と言われる影響で雪の降り方が変わっているが、昼間の雪が溶け出した水が夜間に凍結する「ブラックアイス現象」は地域によっては増えているという。また突然の降雪もあり、雪上性能も以前より重要な項目になっている。

「アイスガード 7」はそんな中で登場したヨコハマ最新のスタッドレスタイヤだ。アイスガードとネーミングされて、20年目の記念すべき商品ともなっている。

スタッドレスタイヤに対するユーザーの不安は、「氷と雪」の性能向上に集中しており、アイスガードは一貫してもっともニーズの高い氷上ブレーキ性能の向上を大切にして、冬の安全を目指していた。ひと口に氷上と言っても温度の低い乾いた氷から表面が濡れて滑りやすい氷まで多様だ。

乾いた氷で滑らないのは、気温の低さによって氷とタイヤの間の水が介在しないから。しかし、実際は氷の上に水膜がのっていることが多く、これが滑る原因となる。これを除去するための技術として、ヨコハマは吸水に力を注いできた。

アイスガード 7の開発目標は「氷に効く、永く効く、雪に効く」とあり、ヨコハマの資料では氷上ブレーキ性能では従来品のアイスガード 6よりも14%向上しているという。その氷上性能を上げながら、それと相反する雪上性能もアップしたことがアイスガード7の注目されるポイントだ。

画像: 左が従来品のアイスガード 6で、右がアイスガード 7。トレッドパターンはヨコハマの新たな開発アプローチである「接地とエッジの両立技術」によって、ヨコハマスタッドレスタイヤ史上最大の接地面積と溝エッジ量を実現した専用パターンを開発。

左が従来品のアイスガード 6で、右がアイスガード 7。トレッドパターンはヨコハマの新たな開発アプローチである「接地とエッジの両立技術」によって、ヨコハマスタッドレスタイヤ史上最大の接地面積と溝エッジ量を実現した専用パターンを開発。

まず氷上性能の向上に使われた技術は、ゴムと混ざりにくいシリカを独自の分散剤を使ったこと。これを大量に使うことで柔軟性を持たせたために、カバーできる温度領域が広がった。

これによってゴムの接地力が上がった。その上で氷の上にできる水の膜を除去する「ウルトラ吸水ゴム」で効果的に吸水と排水を行い、グリップ力を上げている。要素技術としては、新マイクロ吸水バルーンに加えて進化した吸水スーパーゲルで、吸水力の大幅アップが可能となった。

トレッドパターンや構造によるグリップ力の効果も著しい。スタッドレスタイヤは吸水力を上げるために接地面積を広げる必要があるが、雪との両立ではトレッドパターンで雪を吐き出す必要から溝面積を確保しなければならない。高い雪上性能はアイスガード史上最長のエッジ量の効果だ。多くのエッジ、サイプと呼ばれる細い溝は高い雪柱せん断力を持ち、高いグリップ力を発揮する。つまりアイスガード 7では、ヨコハマのスタッドレスタイヤの中で過去最大の接地面積を確保しながら、独自のトレッドパターンで充分な排雪性を確保している。

またブロックは剛性確保の為、立体的に組み合わせるクワトロピラミッド構造としてたがいに支え合う構造を強固にして、エッジが効果的に効くように配慮された。これらのパターンとブロック、そしてコンパウンドの相乗効果で氷上性能は大幅にアップしたという。

もうひとつのセールポイントである「永く効く」は、コンパウンドに得意とするオレンジオイルSでゴムの劣化を防ぎ、サイプの断面形状を三角から円柱状にすることで、タイヤ溝を最後まで使えるように工夫されていることが挙げられる。

氷上性能と雪上性能の向上を試乗して実感

画像: 屋内試験場の氷盤路では、初速度を20km/hに合わせた制動比較テストを行った。アイスガード 7の方が従来品よりしっかりと減速感が感じられ、とくに最後止まる時の手応えがより感じられた。社内テストでは、氷上ブレーキ性能は14%向上している。

屋内試験場の氷盤路では、初速度を20km/hに合わせた制動比較テストを行った。アイスガード 7の方が従来品よりしっかりと減速感が感じられ、とくに最後止まる時の手応えがより感じられた。社内テストでは、氷上ブレーキ性能は14%向上している。

屋内試験場(氷盤路)では、初速度を20km/hに合わせた制動テストを行った。従来品アイスガード 6との比較では、ブレーキング時、氷への食いつきがよく、身体に感じる減速感が異なることがわかる。最後に止まるところでも、グッと踏ん張る感じだ。これまで最強だと感じていたアイスガード6の氷上ブレーキ性能を上回っていた。

さらに氷盤路でゆっくりとハンドルを切った時も、その手応えはしっかりしており旋回力は高い。また、氷盤路からの発進も、最初にタイヤが回る手応えの違いを確認できた。毎回感心するが、氷上性能は大きく進化している。

ところでTTCHの屋内試験場では、氷盤の温度をコントロールできるレーンを設けた。冬季の気象条件にかかわらず、氷盤路の1レーンをマイナス10度から0度までの間で一定に保つことができ、試験効率がさらに向上したという。

画像: 雪道では雪をしっかりとつかんでグリップしていることが感じられ、安心感のある走りを体感できた。

雪道では雪をしっかりとつかんでグリップしていることが感じられ、安心感のある走りを体感できた。

圧巻だったのは旭岳への雪上試乗だった。幹線道路でのシャーベットから、湿った雪、そして深雪まで変化に富んだ山道を走った。試乗車はボルボ V60 AWDで、シャーベット路面での直進性の乱れも小さく、轍の乗り越しも無理なくできる。圧雪路でのターンインや加速も申し分なく、かなり深い深雪もグイグイと掻き分け、深い深雪もグイグイと掻き分け、ハンドルを切った時のフロントの反応とリアの粘りは想像以上だった。

タイヤの前後左右のグリップ力が高く、また路面変化による影響も少なく雪道も安心して楽しく走れた。普段、雪に接することが少ない都会のドライバーにとっても安心できるのは間違いない。美しい雪道の中を走るのはそれだけで楽しいものだ。

アイスガード7、ドライ路面でのしっかりした手応えから、雪上、氷上性能までに冬の守り神としてますます頼りになるスタッドレスに進化していた。(文:日下部保雄/写真:横浜ゴム)

画像: 氷上性能と雪上性能の向上を試乗して実感

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