ヤリスクロス/ライズとハリアー/RAV4の間を埋める「ミドルコンパクトSUV」
カローラクロスは「良質なクルマを求めやすい価格で」という、トヨタ車に一貫した思想を受け継いだコストパフォーマンスの高いモデル。カローラの名を冠する以上はユーザーの期待を裏切ることは許されず、入念に作り込まれたことが随所に感じられる。
カローラクロスは、ステーションワゴンとSUVの中間、いわゆる「クロスオーバー」。と言っても、ワゴン版のカローラツーリングをSUV風に仕立てたのではなく、ダイナミックで洗練されたSUVとしてデザインされている。
車格的にはヤリスクロス/ライズとハリアー/RAV4の間を埋める「ミドルコンパクトSUV」だ。プラットフォームは高剛性のTNGA GA-C。サスペンションはフロントがストラットで、FF車はリアに新開発のトーションビームを採用している(4WD車はダブルウイッシュボーン)。プラットフォームの共通性を考えると、C-HRに近い関係とも言える
パワートレーンは、1.8L 直4のガソリンエンジンと、それにモーターを組み合わせたハイブリッドの2種。トランスミッションは、ガソリン車はCVT、ハイブリッド車は電気式無段変速機だ。駆動方式は、ガソリン車はFFのみだが、ハイブリッド車はFFとリアにもモーターを備えたE-Four(電気式4WD)も設定する。
他社のライバルとしてはホンダ ヴェゼルが想定されるが、ヴェゼルはフィットベースで1.5Lエンジン搭載なのでひとクラス下とも言える。しかも価格的にはカローラクロスのほうが抑えられているのでアドバンテージは大きい。
最新のコンパクトSUVらしい軽快でなめらかな走り
試乗したのは、ハイブリッドの「Z」グレード(FF仕様)。走り出してまず感心したのは乗り心地のよさだ。路面の凹凸をさりげなく吸収し、荒れた路面でもしなやかな走りを実現している。リアトーションビームのサスペンションの走り味はどうかと注目したが、大型ゴムブッシュやミシュラン・プライマシー4の18インチタイヤの採用も効いているのだろう、しっかりとした軽快な足に仕上がっている。
パワートレーンもハイブリッドシステムのモーターのパワーが加わり、すいすいとスムーズな加速感が気持ちいい。追い越し加速やアクセルペダルを深く踏み込むような状況では、電気式無段変速機はエンジンの回転数が高まってから加速が始まるところがあるが、そのメカニズムを理解してトラクションを確かめるようにドライブすれば違和感はない。
第3世代EPS制御のステアリング系は操舵力は軽めで自然なフィーリング。最小回転半径が5.2mと取り回しがいいのも魅力だ。
インテリアは広さと明るさが感じられるデザインで、異なる素材をうまく組み合わせて変化をつけている。豪華というわけではないが、安っぽくなくて好感が持てる。とくに試乗車はパノラミックルーフを装備していて明るく快適だった。
SUVらしくアイポイントが高く、前後席とも見晴らしが良く、運転しやすいのもいいところ。電動スポーツタイプのドライバーズシートはホールド性や着座姿勢とも問題なし。ただ、リクライニング機構が備わる後席の足下まわりは広大とまではいかず、コンパクトSUVであることを実感する。
その一方で、5人乗車でも487Lを確保したというラゲッジルーム容量は十分に広い。ハンズフリーパワーバックドアを装備し、開口部の高さも入念に設定されており(荷室開口部高720mmm)、使い勝手は良さそうだ。