ボルボが考える最高水準の安全性に特化した特別限定車
どうしても前方車両との追突が避けられないときに作動する「追突軽減オートブレーキシステム」は、衝突時の衝撃を和らげてくれる装置だが、これを搭載したボルボS80が輸入車としては初めて型式認定を取得した。
もともとS80に「追突軽減オートブレーキシステム」が搭載されているのだが、日本の法律ではそれを作動させることが許されず、わざわざキャンセルして導入していた。しかし、現行S80の導入後から、ボルボカーズジャパンは国土交通省に改定の働きかけを継続、このたび技術指針が改定されて搭載可能となった。そこでまずは、特別限定車としてS80に設定されたというわけ。それが今回試乗した「S80 2.5T SE」だ。
改定前までの技術指針は、ドライバーのとった制動を常に優先とし、運転支援システムをオーバーライドするという考え方だった。オーバーライドとは、クルマの制動はドライバーの意図で操作することとし、ドライバーの判断や行動が機械よりも優先されるというもの。しかし、この改定で支援システムが優先されることが認められたのだ。
ボルボの追突軽減オートブレーキシステムの作動は3段階に分かれている。まず第1段階では、走行中に前方車両との距離が縮まるとフロントガラス内側の赤い警告灯が点滅し警告音を発する「追突警告」が機能。次の第2段階では、ドライバーの緊急制動に備えブレーキの油圧をプレチャージする「ブレーキサポート機能」に突入する。そして、ドライバーが危険回避行動をとらず、追突が避けられないとシステムが判断した第3段階では、その衝突エネルギーを軽減するため速度を下げる「追突軽減ブレーキ」が作動することになる。
またほかにも、この特別限定車には、アダプティブクルーズコントロールや車間警告機能、ドライバーアラートコントロール、レーンデパーチャーウォーニング、アクティブバイキセノンヘッドライト、パーソナルカーコミュニケーター、ボルボガードアラームなどのドライバー支援機能が搭載されている。
価格も魅力的なものになった。日本に導入されているS80には、V8の4.4Lと、コンパクトな直6 3.2Lの2機種のエンジンが用意されているが、この特別限定車「S80 2.5T SE」は、V70やC70などにラインアップされる2.5L直5ターボを搭載し、価格は「3.2 SE」よりも74万円安い579万円に設定された。
試乗では、追突警告の第1段階まで確認することができた。たとえば、前方に停車している車両があり、それを避けるためブレーキを踏むなどの操作をドライバーがとった場合は警告を発しない。しかし、先が渋滞していて、前方車両が速度を落としていることに気が付かず、車間距離が急に縮まったときには警告灯と警告音で注意を促してくれる。その距離は、警告に気付いてからブレーキを踏んだり、ハンドルを切ったりといった回避行動がとれるタイミングであり、普段、車間距離をあまりとらないドライバーにとっても、万が一の追突回避の可能性が高くなるというメリットがある。
S80との組み合わせが日本初導入となる2.5Lエンジンのパフォーマンスも満足できるものだった。このエンジンは、大パワーと太いトルクでグイグイと引っ張るというものではなく、低速からキビキビ走るといった印象。3.2L比では、最高出力が38ps、最大トルクは20Nmダウンとなるが、それもそれほど気にならない。それになんといっても価格差が74万円もある。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:島村栄二)
特別限定車 ボルボS80 2.5T SE 主要諸元
●全長×全幅×全高:4850×1890×1495mm
●ホイールベース:2835mm
●車両重量:1680kg
●エンジン:直5DOHCターボ
●排気量:2521cc
●最高出力:147kW(200ps)/4800rpm
●最大トルク:300Nm/1500-4500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:8.0km/L
●タイヤサイズ:225/50R17
●車両価格:579万円(2009年当時)限定30台