ロールセンターとは左右のサスペンションが動くときの支点の「中心点」
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レーシングカーの場合、重心とロールセンターのバランスが重要。適正なサスペンションの動きも確保したセッティングが必要になる。
コーナリングする際、クルマは大なり小なり遠心力でロールする。スピードやスプリングレートが大きくロール角に影響しているのは確かだが、それだけというわけでもない。まず理解する必要があるものが重心とロールセンターの関係だ。
ロールセンターは、左右のサスペンションが動き始め、ボディがロールする際の支点の瞬間中心と考えることができる。重心は作用点だ。旋回時に働く重心への遠心力は、重心とロールセンター周りのモーメントとなってロールをしようとする。簡単に言えば、重心とロールセンターが近いほどロールが少なく、離れるほど大きいということになる。
安易に車高を下げると、かえってロールが大きくなる場合も
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「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)より転載。
ロールセンターの求め方は、まずサスペンションアームの交点を割り出す。これがタイヤが上下動しようとするときの瞬間回転中心となる。上下アームのあるダブルウイッシュボーンなら、その延長線上にある。ストラットの場合は、ストラット上部の角度に対して垂直の線とロアアームの交点だ。
その瞬間回転中心から、タイヤの接地中心まで線を引き、その交差した地点がロールセンターとなる。動きから見ると、ロールセンターと重心は振り子を上下逆さまにしたような関係になる。ロールセンターを手で掴んだと仮定すると、重心がぶらぶらと動くわけだ。
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「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)より転載。
重心が下がればコーナリング性能が上がるだろうと安易に車高を下げると、アームの角度が極端に変わってしまうことがある。この場合、重心よりもロールセンターが下がる割合の方が多くなりがちだ。せっかく車高を下げて性能を上げるつもりだったのが、ロールセンターが下がることによってかえってロールが大きくなり、タイヤの路面への接地状態が悪化するということも起こりうる。
レーシングカーなどの場合は、そのへんを十分に考えた上で車高を落としている。また、レギュレーションで許されている場合には、サスペンションジオメトリー自体を変えて、適正なサスペンションの動きを確保している。(文:FAN BOOK編集部 飯嶋洋治)