2021年7月19日、実に9年と8カ月ぶりにトヨタ アクアがフルモデルチェンジを果たした。伝説の「初期受注12万台」を記録した初代デビューはあまりにも偉大だったが、新型の立ち上がりは果たしてどうだったのか。ほぼ10年間の販売台数の変遷を見ていくと、激変していくトヨタコンパクトモデルの勢力図にあって、アクアが愛され続ける理由が見えてきた。

2020年──ヤリスの新世代パワートレーンが世代交代の大波を呼んだ

画像: ヤリスはWRCへの参戦に合わせたGRモデルの追加など、スポーティなイメージを強調している。

ヤリスはWRCへの参戦に合わせたGRモデルの追加など、スポーティなイメージを強調している。

2019年11月5日、トヨタはラッシュがラインナップから消えて以来3年以上の時を経て、カジュアルなコンパクトSUV「ライズ」を発表した。さらに2020年2月10日は、ヴィッツに代わってグローバルコンパクトモデル「ヤリス」を、日本国内でも販売開始している。

同じ時期にラインナップされていた100万円前半から200万円半ばをコアとするトヨタのコンパクトモデルは、パッソ、タンク/ルーミー、ポルテ/スペイドだったが、SUVブームという時流にのったライズは、その新しい個性で人気を博した。

そしてヤリスもまた、強力なセールスポイントが与えられていた。アクアよりも先進的なハイブリッドシステムを搭載していたのだ。もちろんボディサイズはアクアよりひとまわり小ぶりで、「取りまわしの良さ」で凌いでいる。それゆえに室内空間のゆとりこそ、アクアに一歩及びはしなかったものの、新世代パワートレーンの高い完成度は、そんなネガティブを払拭して余りあるものだった。

画像: ヤリスはプラットフォーム、エンジン、ハイブリッドシステムまですべてが新しくなった。

ヤリスはプラットフォーム、エンジン、ハイブリッドシステムまですべてが新しくなった。

プラットフォームは新開発のTNGA GA-B、新しい1.5L 直3「ダイナミックフォース」エンジンを搭載するとともに、モーターを含むパワートレーン全体が小型軽量化されている。バッテリーにリチウムイオン電池を採用し、アクアにない4WD+ハイブリッド「E-Four」まで設定されていたのだった。

その進化は高い評価を受け、ヤリスは一気にトヨタの新型車販売の中核となった。新型が販売開始された翌月、3月度には早くも第3位に急浮上、4月度には一気に首位に躍り出ている。

8月31日にはクロスオーバーSUV「ヤリスクロス」をシリーズとして追加、ヤリスと合わせた販売台数は2万台の大台を超えるなど、さらに勢いが増していった。以来、ほぼ1位を独占しながら現在に至っている。

2020年1月~2021年10月までの新車販売の変遷 ※一般社団法人 日本自動車販売協会連合会 調べ

画像: 「ヤリス」の販売台数はヤリスクロスも含めた数字。月販目標台数はヤリスの7800台に対して4100台と控え目だったが、時に全体の半分以上をヤリスクロスが占めることもあったようだ。

「ヤリス」の販売台数はヤリスクロスも含めた数字。月販目標台数はヤリスの7800台に対して4100台と控え目だったが、時に全体の半分以上をヤリスクロスが占めることもあったようだ。

その勢いに飲み込まれるように、アクアの販売台数は対前年比で60%を切る月が連続する。ランキングも時に20位以下に沈下した。結果、2020年1月~12月の販売台数ランキングでは、ヤリスが15万台以上(ヤリスクロス含む・2020年8月末発売)を売って圧倒的トップ、2位に12万6000台越えでライズが入っている。プリウスは7万に届かない第12位、アクアに至っては6万台を切る第14位となった。

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