2021年12月10日、スズキは軽自動車「アルト」のフルモデルチェンジを発表した。今回のモデルで9代目となるアルトだが、これを機にアルトを軸にした軽自動車の流れをふり返ってみたい。(タイトル画像は新型アルト オンライン発表会での鈴木俊宏社長)

セダンタイプの軽自動車に未来はあるのか?

軽自動車の主流が変遷しても、アルトは脈々と作り続けられてきた。初代発売から42年、8代にわたる国内累計販売台数は約526万台となり、これはスズキ車の中でトップの数値だ。

新型アルトは、セダンタイプながら車高を少し高めて居住性や乗降性を改善し、マイルドハイブリッド車も設定して優れた燃費性能を実現し、予防安全技術も全車に標準装備するなど、「気軽に乗れて、安心・安全で、愛着の持てる」軽自動車となった。いかにもスズキらしい、真面目なクルマづくりの結集だ。

画像: 新型アルトのベーシックグレード、「A(2WD)」。ホイールとヘッドランプ以外、外観は上級グレードと変わらない。

新型アルトのベーシックグレード、「A(2WD)」。ホイールとヘッドランプ以外、外観は上級グレードと変わらない。

初代アルトは47万円だったが、エアコンやパワーウインドーといった快適装備は皆無だった。現在の物価水準を鑑みて、さらに必要とされる安全&快適装備を採用すると、94万円くらいに相当するという。新型アルトのベーシックグレード、「A(2WD)」の車両価格が94万3800円だから、ほぼ初代アルトに匹敵することになる。だが、現代のアルトは前述のように安全&快適装備が充実している。

2020年度の軽自動車市場では、セダンタイプが占める割合は約11%にまでなってしまった。軽乗用車では、スライドドア車が約52%に達している。セダンタイプ軽自動車の市場は縮小傾向ではあるが、「毎日、自由に移動したいお客様のために」スズキはセダンタイプ軽自動車の市場を大切に守り続けたいという。

オンライン発表会で鈴木俊宏社長は、「新型アルトは夜明け前だが、次期モデルでは『朝がきた』と言いたい」と語った。新型アルトのCMに登場する女優の波瑠さんが主演したドラマにかけたようだが、「軽自動車のベースラインを守り続ける」アルトは、カーボンニュートラルの時代にどう進化していくのだろうか。

そして、新型アルトの走りっぷりも気になるところ。これについては、近く試乗する機会がありそうなので、あらためて報告したい。(文:Webモーターマガジン編集部 篠原政明)

■スズキ アルト A 主要諸元

●全長×全幅×全高:3395×1475×1525mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:680kg
●エンジン:直3 DOHC
●総排気量:658cc
●最高出力:34kW(46ps)/6500rpm
●最大トルク:55Nm(5.6kgm)/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置きFF
●燃料・タンク容量:レギュラー・27L
●WLTCモード燃費:25.2km/L
●タイヤサイズ:155/65R14
●車両価格(税込):94万3800円

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