2009年、アルピナから5代目7シリーズをベースにしたラグジュアリーサルーン「アルピナ B7 ビターボ リムジン」が登場した。BMWとともに、アルピナのエンジニアとクラフトマンたちが2年以上の歳月をかけて完成させたモデルだ。ただハイパフォーンスなだけでなく、ただ豪華なだけでもない。「スポーツ性と快適性の完璧な統合」は、アルピナが新たなステージに入ったことを示していた。ここではドイツ・ブッフローエでの試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年8月号より)

市街地では驚くほど軽快で、しなやかな乗り心地を提供

重厚なドアを開けると、そこには一般庶民にはあまり縁のないような、ゴージャスな空間が現れる。レザー、ウッド、そしてアルミのアプリケーションが織りなすラグジュアリーな雰囲気は、コクピットに入った瞬間に鳥肌が立つほどのインパクトがあった。

さらにスタートボタンを押してクルマを数メートル流すように走らせると、湧き上がるように押し寄せるパワーの広がりを感じる。それとともにボンネット下のエンジンには、コンマ数ミリの領域で行われた高い精度による品質の高さがあるのだなと、改めて感じさせられる。

画像: サスペンションはコンフォート、ノーマル、スポーツと、3種のセットアップが可能。

サスペンションはコンフォート、ノーマル、スポーツと、3種のセットアップが可能。

まさに絹のような滑らかさを持ったエンジンに誘われるようにアウトバーンへと向かう。そこでハイスピードの巡航テストを行ったが、まったくストレスなくメーター上で300km/h近くに達したのには驚いた。超ワイドタイヤにもかかわらず轍の影響も受けず、文字どおり矢のように直進するのだ。

そしてこの性能に合ったベンチレーテッドディスクは、確実なストッピングパワーを発揮する。さらに一般道路、そして市街地と続く試乗コースでは、それまで驚くような高速スタビリティを見せてくれた5mを超える巨体が、まるで中型セダンであるかのように、驚くほど軽快なハンドリングを示し、同時に直接的なショックをほとんどすべて消し去るような乗り心地でパッセンジャーを驚かす。

もちろん、ベースとなっているBMW750iに装備されている数々のハイテクデバイスは継承されている。たとえばダイナミックドライブコントロールの働きはそのまま移植されているので、コンフォート、ノーマル、そしてスポーツ、スポーツ+と異なるシャシセッティングを楽しむことができる。

しかもアルピナの発表によれば、このB7の燃費は欧州総合モードで100kmあたり11.9Lとのこと。日本流の表示方法にすると8.4km/Lということになる。これはまさにアルピナマジックの本領発揮といえるだろう。

アルピナB7はまるで、トゥールビヨン(精度を上げるための特別な仕組み)を持った高級な機械式時計のような存在であった。これはひょっとすると、現代の世の中の動きや関心からはちょっと外れているかもしれないが、そこには人間が長い間、切磋琢磨して得ることができた技術の結晶がある。

そしてそれを堪能することは、決して単なる贅沢ではないと言えるだろう。それは人間の英知を確認する作業でもあるのだ。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)

BMWアルピナ B7 ビターボ リムジン 主要諸元

●全長×全幅×全高:5087×1902×1484mm
●ホイールベース:3070mm
●車両重量:2040kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4395cc
●最高出力:373kW(507ps)/5500rpm
●最大トルク:700Nm/3000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●EU総合燃費:8.4km/L
●タイヤサイズ:前245/35R21、後285/30R21
●最高速:280km/h (リミッター)
●0→100km/h加速:4.7秒
※EU準拠

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