2009年、アルピナから5代目7シリーズをベースにしたラグジュアリーサルーン「アルピナ B7 ビターボ リムジン」が登場した。BMWとともに、アルピナのエンジニアとクラフトマンたちが2年以上の歳月をかけて完成させたモデルだ。ただハイパフォーンスなだけでなく、ただ豪華なだけでもない。「スポーツ性と快適性の完璧な統合」は、アルピナが新たなステージに入ったことを示していた。ここではドイツ・ブッフローエでの試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年8月号より)

プレミアムな7シリーズにさらなる洗練の手が加えられている

贅沢な消費生活を続けてきたアメリカ社会のバブル崩壊に端を発した、世界的な経済恐慌。これによって起こった自動車販売の急減、とくに大型、ラグジュアリーモデルの不振ぶりを見ていると、アルピナのようなスペシャリストの行方はどうなるのかと、どうしても心配になる。

プレミアムなポジションが確立されているBMWをさらにリファインするという仕事を40年間に渡ってやってきたアルピナのビジネスは、しかしながら安泰の様子で、今年(編集部註:2009年)のジュネーブ国際自動車ショーには、いくつかのニューモデルを発表していた。その中でも、とりわけ注目を浴びていたのが今回、ここで紹介するB7である。

画像: 5代目BMW7シリーズをベースに2年以上の歳月をかけて開発されたラグジュアリーサルーン。その走りには高い精度による品質の高さが感じられる。高級な機械式時計のような存在といえる。

5代目BMW7シリーズをベースに2年以上の歳月をかけて開発されたラグジュアリーサルーン。その走りには高い精度による品質の高さが感じられる。高級な機械式時計のような存在といえる。

アルピナのモデルは、常にハンドメイドであることによる高品質が光っている。また、その挙動、乗り心地はあくまでも快適であるが、さらにそこには必ず冴えたスポーツ性が内在している。走りにおいてこうした二面性を巧みに1台のクルマに融合させている点が、アルピナの魅力なのである。

さて、このB7はBMWの最新7シリーズをベースにして、アルピナのエンジニアとクラフトマンたちが2年以上の歳月をかけて完成させたラグジュアリーサルーンである。

まずボディだが、非常に控え目ながら、オリジナルの7シリーズにさらなる洗練の手が加えられている。あまり目立たないが、フロントとリアのスポイラーは、オリジナルモデルに対してそれぞれ30%、そして15%プラスのダウンフォースを発生させるという。

またシャシはフロントに245/35ZR21、リアに285/30ZR21サイズのロープロファイルタイヤを装着したことに合わせたセッティングが、行われている。

そしてアルピナブルーに塗られた長いボンネットの下には、ツインターボが装着された4.4L V8エンジンが鎮座している。このエンジン内部にはアルピナオリジナルのスペシャルハイパフォーマンスピストンが採用されており、また、2基のターボユニットは新たにセッティングを改良したもので、さらに大型化されたインタークーラーなどによって、最高出力は507ps、最大トルクは700Nmを発生する。これはベースの750iと比べるとパワーで100ps、またトルクでは100Nm高められているということになる。

その結果、アルピナの発表によればスタートから100km/hまでの加速所要時間はわずか4.6秒、そして最高速は280km/hでリミッターが効くことになるという。この数値は、4ドアサルーンというジャンルを超えて、ポルシェをはじめとするスポーツカーの領域に入るものである。

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