バッテリーパックを分割搭載して、前後重量配分を最適化
「ニューバード」と名付けられたこのモデル、ベースとなっているのは1986年にサンダーランド工場で初めて生産された欧州版ブルーバード(日本名オースター)である。そのボディに、日産の次世代モビリティの象徴的存在であるリーフのメカニズムを丸ごと換装してしまった。
ガソリンエンジンとギアボックスはすべて取り外され、リーフ用の電気モーター、インバーター、バッテリーパック(40kWh)が取り付けられた。バッテリーモジュールは、エンジンベイとトランクに分割して搭載、最適な重量配分が実現されているという。
パワーステアリングやブレーキシステムは、現代の仕様にバージョンアップ、電気式のパワーアシストを採用している。バッテリーパック搭載による重量増に対応するために、サスペンションも強化済みだ。
外装はノーマルのブルーバードだが、ボンネットバッヂにLEDバックライトを取り付け、静止時はぼんやりと浮かび上がるアレンジを加えた。ほかに1980年代に好まれたデザイントレンドをモチーフに、21世紀の美的感覚をプラスしたグラフィックスを施している。こちらのデザインを担当したのは、正真正銘のNissan Design Europeだ。
ヴィンテージモデルの心臓をリーフにすれば、日常的に使えるかも
電気自動車としてのパフォーマンスもしっかり考えられている。充電ポートはもともと給油口があったスペースに設定される。バッテリーは最大6.6kWでチャージ可能だ。バッテリーの充電状態は、ドライバーインストルメントパネル内の「元燃料計」で確認することができる。
非公認ではあるものの、満充電での航続距離は約130マイル(およそ210km:運転状況や道路環境による)を確保。0→100km/h加速は15秒弱だ。
電動コンポーネンツへのコンバージョンを行ったのは、サンダーランド工場にほど近いファクトリー「Kinghorn Electric Vehicles」。日産リーフの電気モーターなどのユニットを再利用して、クラシックカーをBEVに変換するスペシャリストである。
同社の責任者であるジョージ・キングホーンのコメントは、電動化という潮流に対する期待値を高めてくれるもの、と言えるかもしれない。
「古いクルマを電気自動車に変えることで、日常的に利用できるヴィンテージモデルに仕立てることができます。運転するのはもちろん楽しいですが、信頼性も高まりますし、なによりいくら乗っても環境に負荷をかけずに済むのが素晴らしいと思います」
日産ブルーバードの魂を持ちながら日産リーフの心臓を備える「日産ニューバード」は、1度きりのプロジェクトではある。けれど「電動化」の未来が持つひとつの可能性をオフィシャルに見せてくれたことに、拍手を送りたい。
そしてできればいつの日か、日本仕様のブルSSSをベースに「すんごいやつ」を作ってくれると、かなり嬉しい。(文:Webモーターマガジン編集部 神原 久)