悠久の大地、初夏の大北海道大陸を気の向くままに走り抜いた12日間のクルマ旅 第2話! 素晴らしき森のキャンプ場で目覚め、山上湖の湖底に沈んだ集落の物語に思いを馳せる。
岩尾内湖に集落の跡をみる
朝ご飯のあとは、お世話になった管理人のオバチャンに、また来ますねと別れを伝え『岩尾内湖白樺キャンプ場』を後に、折角なので岩尾内湖周辺をスローに探索する。
湖畔の道を行き、車止めにT-4ウェスティを残し天塩川インレット(流入部)に向かい、柳の枝をはらいながら谷地を歩くと、其処には忽然と一時代前の家屋の基礎部分が残っていた。
高さ58m、堤頂長448.0mの重力式コンクリートダム、岩尾内ダムがせき止めるここ岩尾内湖には、かつて朝日町第二の集落である似峡(にさま)を中心に岩尾内、上峡、茂志利(もしり)地区の173世帯が生活を営む村落があったのである。
大正2年に宮城、福島、奈良をはじめ、道内各地からの入植者によって開拓が始まったこの地域は、奥士別御料地およびニイサマ殖民地と称され、苦労の末に開墾を成就。水稲、ジャガイモ、ビートなどが耕作されていたという。
家屋はもはや朽ちた面影すらなく、基礎のみを残すだけで、それがことさら得も言われぬ侘びしさを醸し出す。
ここに確かに人々の暮らしがあったのだという痕跡を眺めるにつけ、ボクは脈絡無く胸が熱くなり、感慨にふけるのだった・・・。
野ウサギが首を伸ばし、遠くから感傷に浸るボクを窺っている。
風が湖面を渡ると柳の枝がザワザワと揺れ、兎はそれに驚いたのか、正しく脱兎の如く谷地を駆けていった。
良き旅と出会いを。
ラヴ&ピース。