縦置きエンジンへのこだわりが生んだLPレイアウト
彼はエンジン縦置きにこだわった。けれどもそうするとトランスミッションケース本体はリアアクスルから後方へ大きく張り出してしまい、ル マンカーならともかくロードカーとしては成立しなくなる。
ただでさえ巨大なエンジンをどうやって縦置きリアミッドに設計するか。気筒の方が理にかなっていることはわかっていたが、それではランボルギーニの旗艦モデルとして不足。やはり12気筒だ。そこでスタンツァーニはパワートレーンごと″ひっくり返す″という奇策を思いつく。この時点ですでに将来の4WD化も見据えていたという。
キャビンにトランスミッションケースが出っ張り、大きなエンジンはリアアクスルの前に鎮座、F1マシンのようにサイドラジエータ方式を採用する。ガンディーニはそんなスタンツァーニの奇策、LPレイアウトをベースにオリジナルデザインを描いた。ちなみにLPとは、イタリア語で「縦方向後ろ」を意味する「Longitudinale Posteriore」を略したものだ。
同時に、十分な乗員2名用のキャビンスペースも確保しなければならない。必然的にそのスタイルは短くそして平らになる。カウンタックの象徴というべきシザースドアもまた、「なければ乗り降りできない」という必然だった。
こうして71年にプロトタイプが誕生した。2021年はきっかり50周年。ランボルギーニ社は当初、ミウラ40周年時のコンセプトカーのようなショーカーを作るつもりだったのだろう。
それはリバイバルではない。あくまで正統的進化形なのだ
ところがエンジニアリングチームとデザインチームが公道を走るクルマにこだわった。サイズやデザインだけを考えたなら、V10エンジンを積んだウラカンをベースにすることもできたであろう。
けれどもそれこそ″クンタッチ〟ではなくなる。どれほどガンディーニデザインに迫っていようとも、はたまた優れていようとも、ウラカンベースではもはや“クンタッチ”とは言えない。なぜならそこにオリジナルカウンタックの血統がエンブレム以外に見当たらないからだ。
開発陣はそこも熟知していた。カウンタックをカウンタックたらしめているのはスタンツァーニのLPレイアウトであると。だから最新作である(LPレイアウト)シアンをベースにオマージュを作り上げた。
そこには由緒正しき血統があった。カウンタック以降、受け継がれてきたLPレイアウトという血統だ。ランボルギーニのフラッグシップモデルは、ディアブロ以降もまた、「名を変えたカウンタック」なのだから。(文:西川 淳/写真:アウトモビリ ランボルギーニ)
ランボルギーニ カウンタックLPI 800-4 主要諸元
●全長×全幅×全高:4870×2099×1139mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1595kg
●エンジン:V12 DOHC
●総排気量:6498cc
●最高出力:574kW(780hp)/8500rpm
●最大トルク:720Nm/6750rpm
●モーター最高出力:34hp
●モーター最大トルク:35Nm
●トランスミッション:7速AMT
●駆動方式:縦置きミッドシップ4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●タイヤサイズ:前235/30ZR20、後355/25ZR21
●最高速度 355km/h
●0→100km/h 2.8秒
●0→200km/h 8.6秒