「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、トヨタ エティオスだ。

インドならではの要求をしっかりと盛り込んだ

画像: センターメーターを採用。トランスミッションは5速MTのみ。押しやすいホーンボタン、大きなエアコン吹き出し口やボトルホルダーがインド仕様の特徴だ。

センターメーターを採用。トランスミッションは5速MTのみ。押しやすいホーンボタン、大きなエアコン吹き出し口やボトルホルダーがインド仕様の特徴だ。

運動性能的には、パッと動いて、チャッと止まって、スッと曲がれて、乗り心地がいいのがポイントだ。また、5人乗りのクルマに8人乗車なんていうのも日常茶飯事なので、低速トルクを重視したセッティングとなっている。今回も5人乗車でも試乗してみたが、3000rpmで最大トルクを発生するため、走り出しから加速もパワーも不足はまったく感じられなかった。

クラッチもつながりやすく、ステアリングのフィールも軽く少量の舵角で向きが変わるものの、その後は落ち着いた動きを見せ、ブレーキの初期制動力も高いなど、とにかくインドで乗りやすいことにこだわって開発したというのが頷けるものだった。

それでいて燃費は日本の10・15モードに近い条件で、1.5Lセダンで17.6km/L、1.2Lハッチバックで18.3km/Lとなかなかの数値。というのも、ガソリン代が日本の貨幣価値に換算すると1L約700円!と高いので、燃費の良さはヒットするか否かの重要項目なのだ。

ホーンの鳴らしやすさに気を配っているのもインドならでは。隣のクルマとぶつからないようにドアミラーはたたんだままとか、周囲に気を配らずに運転している人がほとんどだという。というより、トラックやバスは常に過積載なので後方もまったく見えないため、「追い越しを掛けるときはプリーズ ホーン」とクルマの後ろに書いてあるくらい、ホーンは必需品。センターメーターが採用されているのも、渋滞中の視線移動を少なく、常に前を見て運転に集中できるからだ。

ユーティリティ面では、とにかくたくさんの人が乗れることを重要視するので、後席の座面をフラットにしている特徴もある。インド人の手足は長いので、まわりのスペースもかなり広く取られている。乗降性も良く、民族衣装のサリーを着ていても楽に乗り降りできそうだ。

また、エアコンは最重要課題。顔に直接風が当たるのは大歓迎らしく、後席にも十分に風が届くような位置に吹き出し口が設定されている。水分補給も欠かせないので、1Lのペットボトルが入るホルダーを7カ所、冷却機能付きのグローブボックスは1.3L分の容積がある・・・。と、インドのニーズをたっぷり盛り込んだエティオスは、すでに現地では大ヒット中とのこと。今後の展開が楽しみだ。

画像: ホイールベースが短いハッチバックの方が運動性はいいが、セダンでも遜色はない。多人数乗車でもパワー不足を感じさせないのもインド仕様らしい。

ホイールベースが短いハッチバックの方が運動性はいいが、セダンでも遜色はない。多人数乗車でもパワー不足を感じさせないのもインド仕様らしい。

■トヨタ エティオスVX(エティオス リーバV) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4265×1695×1510mm(3775×1695×1510)
●ホイールベース:2550mm(2460)
●車両重量:930kg(920)
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1496cc(1197)
●最高出力:66kW<90ps>/5600rpm(59<80>/5600
●最大トルク:132Nm<13.5kgm>/3000rpm(104<10.6>/3100)
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:横置きFF
●タイヤ:185/60R15

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