100%サスティナブルな燃料でも、性能低下はなし
ユーグレナ社が生成した次世代バイオディーゼル燃料は「サステオ(SUSTEO)」と名付けられ、すでに自治体や鉄道、航空機、船舶などさまざまな輸送業態への供給、実証実験などが進められている。
ちなみに航空機で最初にサステオを使用して空を飛んだのは、プライベートジェット機「ホンダ ジェット エリート」だった。一般向けチャーターフライトに向けたデモンストレーション的フライトではあったものの、将来的には顧客がオプションとして「サステオ」を選択できるサービスも検討しているという。
そして2021年11月、スーパー耐久という舞台でユーグレナ社はマツダとタッグを組み、さらにエポックメイキングな「実験」に臨んだ。これまでに供給されてきた「サステオ」は既存のジェット燃料や軽油などと混合されたものだったが、参戦する「#37 MAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIO」には、まじりっけなしでミドリムシ由来の100%サステオが使用されたのだ。
一般的な普及に関連して注目したいポイントが、レースで使われたSKYACTIV-15Dの場合、エンジン本体には「サステオ」使用に対応するための改造をなんら受けていなかった、ということだろう。点火系など制御に関わる部分や排気系についてはチューニングが入っているようだが、現存している多くのディーゼルエンジンに大がかりな変更なしで使用できる可能性が高い。
性能も石油由来の軽油と同等。つまり、普通に今乗っているディーゼルモデルにも使えるということなのだ。
目指すはリッター100円。「当たり前の世界」がもうすぐやってくる?
ただし、やはり今のところはコストが最大のネックだ。ユーグレナなどの微細藻類は陸上植物由来のバイオマスに対して桁違いの生産性が期待できるというけれど、それですら培養段階で水の補充や栄養源としての炭素、栄養分の添加などに、大きなエネルギーの投入が必要とされている。
もちろんユーグレナとして、一般に普及させるための目標は設定されている。2020年に公表された計画では2025年に商業規模のプラントを建設、「バイオ燃料」の生産量を2000倍に引き上げることを目指していた。生産コストは100分の1とのこと。生産量は2025年までに25万kLに達し、製造コストをさらに大幅に下げるという。
その際の目標価格も実は具体的だ。ずばりリッター100円。夢のような低コストでどんなに走り回ってもカーボンニュートラル。すべての常識が覆る可能性を秘めている。
2023年にはスーパーGTでも、バイオ系のサスティナブル燃料「カーボンニュートラル・フューエル」の導入が始まる予定だという。国内レースにおけるSDGsな取り組みは、急速に深まりつつあるようだ。
この分だと「バイオ燃料が当たり前」に内燃機関に使われる時代は、想像しているよりもずっと早く訪れることになるかもしれない。課題はもちろんいろいろある。けれど電動化とともに、サスティナブルなモータリゼーションの選択肢が増えるというのは、素直に喜ばしいことではないだろうか。
マツダによるスーパー耐久レース 参戦体制
チーム名:MAZDA SPIRIT RACING
チーム代表:前田育男(マツダ 常務執行役員)
レース運営サポート:TEAM NOPRO(ノガミプロジェクト)、HM RACERS(広島マツダ)
車両:#55 MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bioconcept(ST-Qクラス)
ドライバー: 井尻 薫、関 豊(以上、プロレーシングドライバー)、寺川 和紘、前田 育男(以上、社内ドライバー)