今回は「BMWパワーの新展開」を紐解く企画を特集しているが、「i:電動化」に続くキーワードは「M:スポーツドライビング」。Mと電動化との結び付きは現時点ではまだなく、これまでの路線が引き継がれている。今回はMの最新モデルであるM4カブリオレを中心に、3モデルからいまの「M」のコンセプトについて掘り下げる。(Motor Magazine 2022年4月号より)

圧倒的なパフォーマンスはフラッグシップゆえの余裕

さて、M4カブリオレの実力を知った後でも、改めて特筆に値するゴージャスな雰囲気とさらなる走りのパフォーマンスに圧倒されるのが、日本には2019年末から導入が行われている「M8クーペコンペティション」。Mハイパフォーマンスモデルのフラッグシップであることは、まずその佇まいにも表現されている。

4870×1905mmという全長と全幅に対して、全高は1360mm。そんな堂々たるサイズのボディにもかかわらず、キャビン空間は完全に前席2人のためだけに割り切られたことで、ベースの8シリーズともどもそのプロポーションの流麗さは数あるBMW車の中にあっても圧倒的。もちろん、インテリアのゴージャスさも群を抜いている。取材車は「フルレザーメリノインテリア」や「アッシュブラックウッドトリム」といったオプション装着で、なおさらだ。

画像: M8クーペ コンペティション。大柄なボディながら、走りは機敏かつ軽快だ。

M8クーペ コンペティション。大柄なボディながら、走りは機敏かつ軽快だ。

一方、Mハイパフォーマンスモデルならではと思えたのが、8シリーズには「インテグレイテッドアクティブステアリング」という名称で設定される4WSシステムがM8には用意されていないこと。開発者から直接の回答を聞き出せたわけではないが、ベースのBMW車がランフラットタイヤを採用しながらMハイパフォーマンスモデルではそれを採用しないという例があることからすると、こちらも重量の増加を抑えたいという狙いはもとより、最小回転半径が5.2mから5.7mに拡大してしまうという点を受け入れながらも、わずかにでもより自然な走りのフィーリングを獲得するために敢えて不採用を決断したという可能性は十分にあるように思う。

実際、大柄なボディを持て余さずに済む舞台が用意されれば、このモデルは見た目から受ける印象以上に機敏で、軽快に走ってくれる。実に625psの最高出力と750Nmの最大トルクを発するという2基のツインターボ付きV8エンジンの実力を解放しようとすれば、たちまちとんでもない速度に達してしまうため、ことのほか強い自制心が必要なモデルである点は否めないが、そのはるか手前の領域でゆったりと走っていても、類まれに優雅な走りのテイストの豊かさを享受できる。

大人がリラックスして長時間を過ごすことは望めないタイトな後席の空間も、サーキット以外では解放することが許されないほどの動力性能も、無駄と考えれば確かに無駄な存在だ。しかし、だからこそ現実的にも精神的にもリザーブされた絶大なポテンシャルを備え、シリーズのフラッグシップとして相応しい立ち居振る舞いを提供してくれる点に、他の追随を許さないこのモデルならではの価値が読み取れると言っても良い。

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