2022年夏頃のワールドプレミアが確定的な新型日産エクストレイル。兄弟車である北米版ローグには2022年から新世代1.5L 直3ターボが設定されたが、欧州ではすでに同系のエンジンが発電を担う新世代e-POWERモデルの存在を明らかにされている。日本を代表する本格派SUVは果たして、これからどんな進化を遂げることになるのだろうか。

さらなる高みに至るための新たな「インテリジェント4×4」技術

これまで見てきたとおり新世代e-POWERは、ことドライバビリティという魅力についてはそうとう期待して良さそうだ。

単純に電気モーターのスペックだけで比べてみても、オーラ e-POWER(2WD)が最高出力136ps/最大トルク300Nmだったのに対して、キャシュカイe-POWER(2WD)はそれぞれ188ps/330Nmに向上している。車格の違いを考慮しても、さらなるハイパフォーマンスが予想できる。

画像: キャシュカイにはこれまで、1.3L 直3 MHEVが設定されていた。こちらもエミッション的には非常に優れている。

キャシュカイにはこれまで、1.3L 直3 MHEVが設定されていた。こちらもエミッション的には非常に優れている。

環境性能についても、優れていることは間違いない。キャシュカイe-POWERはまだ認証申請の段階ではあるものの、総合燃費は18.9km/L、CO2排出量119g/kmと公表されている。英国仕様の1.3L 直3 MHEVターボモデルがそれぞれ15.5-15.6km/L、144-146g/kmであることを鑑みれば、エミッションの優位性は明らかだ。

加えて、エクストレイルの新世代e-POWERには、キャシュカイに現状設定されていない4WDモデルがラインナップされることにも着目しておきたい。

オーラe-POWERの4WDモデルでは68ps/100Nmのリアモーターが追加されていたけれど、エクストレイルの4WDは日産の最新4輪制御技術を盛り込んだ「e-4ORCE(イーフォース)」となる。

モーターによる加速、回生、ブレーキの制御まで含めた加減速トルクの協調制御は、路面コンディションを問わない抜群のドライバビリティを実現しているとのこと。ともすればフル電動化までの「中継ぎ」的な立ち位置に思われがちなハイブリッドだが、その可能性はまだまだ無限大なのかもしれない。

「つながらない」からこそつながる未来が、もしかするとあるのかも

興味深いことに欧州向けの新しいe-POWERのリリースでは、「外部から充電する必要がない=つながない」ことをそのメリットのひとつとして強くアピールしている。「外部から充電できる=コンセントにつなぐ」ことの優位性を謳うPHEVやバッテリーEVといった、電動化におけるライバルたちに真っ向から勝負を挑んでいるかのようだ。

画像: 北米仕様のローグは、先代に対して短めのオーバーハングでマッシブなたたずまいを演出している。全長4648×全幅1838×全高1689mm、ホイールベースは2705mmだ。

北米仕様のローグは、先代に対して短めのオーバーハングでマッシブなたたずまいを演出している。全長4648×全幅1838×全高1689mm、ホイールベースは2705mmだ。

確かに、欧州だけでなく日本でも、充電環境を整えるのが難しい自動車ユーザーはけっして少なくない。つながることでそのメリットが初めて享受できるプラグインモデルが増えてくれば一方で、充電スポット渋滞といったこれまでになかった課題も表面化してくることだろう。

エンジンを最大限効率的に使って自家発電した電気によって、どこまでもスタンドアローンで走り続けることができるe-POWERは、そういう意味ではより実用性に富んでいる。そして普通の人が「マイカーの電動化」に向かう道としては、よりリアリティがあるように思える。

たとえば将来、次世代バイオ素材をもとにしたカーボンニュートラルな燃料が本格的に実用化されたなら、e-POWERのようなシリーズハイブリッドの技術はさらに、面白いポジションに立つことになるのかもしれない。

新型エクストレイルe-POWERはある意味、その重要な試金石となるような気がする。大いに期待しながら、日本上陸を待ちたいものだ。

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