「クーペとSUVの融合」と謳う
日産はSUVモデルを作るのが上手い。日本市場には、デュアリス、エクストレイル、ムラーノを投入しているが、それらは同じSUVというジャンルにありながら、それぞれ大きさが異なるだけではなく、違うジャンルに属すると言っていいほど性格が異なり、それによって幅広い層から大きな支持を集めている。
加えて、北米と欧州市場には、インフィニティEX、FXもラインナップ。パスファインダーも相変わらずの人気を誇っている。大きなSUV市場を持つ北米市場で堅調な販売を見せる一方で、欧州市場ではニッサンはSUVメーカーというイメージもあるほどの人気ぶりだ。
そして、このスカイライン クロスオーバーはまた違った魅力を持つSUVモデルだ。「セダンとSUV」ではなく、「クーペとSUVの融合」と謳う。
このモデルはすでに北米市場と欧州市場でインフィニティEXの名前でデビューしているものの、当初から日本市場にはスカイライン クロスオーバーとして投入されることが決まっていたため、そのデザインはスカイライン クーペのイメージを反映させたものになっている。
このクルマの最大の特徴は、FRとそれをベースとした4WDとしていること。ロングノーズ、リアードキャビン、小さなガラスエリアといった基本デザインは、従来のSUVの常識とはまったく異なるものになっている。同じFRベースといっても、カイエンやX5などとも異なり、これはもはや新しい形の4ドアスポーツと言えるかもしれない。その姿はカイエンよりもむしろパナメーラに近いのでは、とも思う。
SUVらしからぬ洗練された「ハンドリング指向」
運転席に乗り込むと、まるでクーペのような贅沢な空間を感じる。アイポイントはやや高めながら、高めのコンソール、包み込むようなインテリアがほどよいタイト感とラグジャリー感を出している。派手さと渋さを感じさせる大人っぽい空間だ。
アイポイントの高さはヒップポイントをクーペよりも15mm高めたことによるもの。この610mmというヒップポイントは乗り降りしやすく、着座すると自然な見晴らしをもたらす。さらにややアップライトに座ることで、ホイールベースが2800mm(クーペは2850mm)に縮められているにもかかわらず、室内空間は十分に保たれている。
ちなみに、まずはこのヒップポイントを決めてから、全体のプロポーションを決定していったという。後席もパーソナルで優雅な雰囲気を持っていて、まるで応接間で寛ぐような快適さがある。
パワートレーンはVQ37VHR型3.7L V6と7速ATの組み合わせのみの設定となるが、駆動方式は電子制御トルクスプリット4WDとFRを選択可能、さらにそれぞれに標準仕様と豪華仕様となるタイプPを設定されているので計4グレードとなる。タイプPはアラウンドビューモニター、本革シート(ドライビングポジションメモリー付き)などが標準で装備される。
肝心の走り味だが、これはまるでSUVらしくないハンドリング指向。330ps/361NmのV6エンジンは、FRモデルでも1700kgを超えるこのボディに対しても余裕たっぷりで、7速ATが気持ちよくそのパワーを引き出してくれる。
また、このモデルのために開発し直された足まわり、ねじり剛性が高められたボディ、ステアリングのフリクション改善などにより、適度なロールを許しながら、しなやかな乗り心地とシャープな回頭性を見せる。走りの洗練度は高い。
SUVモデルとなれば4WDが販売の中心となるのだろうが、スカイライン クロスオーバーはFRも実に魅力的。限界性能はともかく、個人的にはFRのすっきりとしたハンドリングにも好感を持った。
やはり、このクルマの狙いはスーパーSUVの顔をした4ドアスポーツなのだと思う。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘/写真:永元秀和)
日産スカイライン クロスオーバー 370GT FOUR タイプP 主要諸元
●全長×全幅×全高:4635×1800×1575mm
●ホイールベース:2800mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3696cc
●最高出力:243kW(330ps)/7000rpm
●最大トルク:361Nm/5200rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:499万8000円(2009年)