三菱i-MiEV以来となる軽乗用規格の電気自動車「日産サクラ」に初試乗。「日本の電気自動車の中心になるクルマを目指して、日本を象徴する花の名前を冠した」という高い志の深層を、チェックしてみた。実質約178万円からという現実的な価格設定もさることながら、その完成度はやはり大いに気になるところだ。

乗り込むほどになじんでいく感覚。「酔わないワンペダルドライブ」を実現

電気自動車に乗る醍醐味のひとつに「ワンペダルドライブ」があるが、サクラでは新たなひと工夫がプラスされている。

電気モーターの回生力を利用して、アクセルペダルのオフだけでしっかりとした減速を行うワンペダルドライブは、慣れてくればブレーキよりも滑らかな減速感を操ることができるようになる。ただ問題は、アクセルペダルの開閉をラフに行ってしまうとギクシャクとした加減速によって、同乗者が酔ってしまう場合も多い。そのためリーフやセレナなどでは、「ワンペダルって使いづらい」というネガティブなイメージにつながってしまうことも、あったという。

画像: 「モノリス」と名付けられた統合型インターフェイスディスプレイが、高い機能性をアピール。センターディスプレイは、最上級グレードの「G」が9インチ、ほかが7インチとなる。ADASの充実度も日産車随一で、プロパイロットには緊急停止支援システムを備えるほか、軽自動車としては初めてプロパイロットパーキングを搭載している。

「モノリス」と名付けられた統合型インターフェイスディスプレイが、高い機能性をアピール。センターディスプレイは、最上級グレードの「G」が9インチ、ほかが7インチとなる。ADASの充実度も日産車随一で、プロパイロットには緊急停止支援システムを備えるほか、軽自動車としては初めてプロパイロットパーキングを搭載している。

そこでサクラでは、ドライバーの熟練度や運転スタイルにフィッティングさせられる機能を、ワンペダル感覚を生む「e-Pedal Step」に初めて追加してきた。もともと加速側の特性を制御するドライブモードとして「ECO」「Standard」「Sport」が設定されているが、サクラではe-Pedal StepをONにした時の減速力もそれぞれ変化させているのだ。

e-Pedal Stepを作動させた時にアクセルペダルをオフにすると、最大で0.2GのマイナスGが発生するのは共通だが、そこまでに達する時間が3つのモードでそれぞれ異なる。Sportが素早く減速を始める一方で、Standardはわずかにラグが生じ、Ecoではさらに減速のかかり方も緩やかになっていく。そのため、ラフなペダル操作で挙動の乱れが生じにくくなるという。

Sportモード×e-Pedal Stepは、キビキビ感が愉快痛快

実際にドライブしながら違いを試してみたが、その差はかなりはっきりしていた。Ecoでは加速感がマイルドになるだけでなく、アクセルペダルをオフにしても緩やかに速度が落ちていくだけだ。それは慣れているドライバーにとっては空走感にもつながっているが、初めから理解しておけば穏やかで優しい走り味として納得できる。

画像: 減速Gが高まるとブレーキランプも点灯。その作動が眼前のマルチインフォメーションディスプレイに表示されるので、後続車に追突される不安感も少ない。

減速Gが高まるとブレーキランプも点灯。その作動が眼前のマルチインフォメーションディスプレイに表示されるので、後続車に追突される不安感も少ない。

対照的にSportは、ペダルのオンオフで生まれる加減速Gの変化がダイレクトで小気味よく、かなりの通好みにセッティングされている。ドライバーのコントロールに対してあらゆるレスポンスが研ぎ澄まされている感覚は、痛快なドライブフィールを生む最高のスパイスだ。

電費は確かにEcoに劣るので、家族を乗せる時はEco、ひとりで走るならSportと、シーンに合わせて使い分けるのもいいだろう。最初はペダルのオンオフがラフでも、ワンペダルドライブを使っているうちに次第になじんでくることも期待できるという。Ecoから練習し始めて十分慣れてきたら、ぜひSportを堪能して欲しい。

航続距離は180kmながら、毎日乗っても満足できる仕上がりだ

価格はデイズ ハイウェイスター同等、内外装のデザインについてはインパクトやキラキラ感こそ控えめではある。それでも軽自動車としては初のプロジェクタータイプ3眼ヘッドランプを中心とした顔だちは、クリーンで先進的な魅力にあふれている。

画像: 荷室容量は4人乗車時で107L。後席は左右独立でリクライニングが可能だ。後席背もたれをフォールドするとほぼフラットな床面が出現。広大な荷室スペースを作り出すことができる。

荷室容量は4人乗車時で107L。後席は左右独立でリクライニングが可能だ。後席背もたれをフォールドするとほぼフラットな床面が出現。広大な荷室スペースを作り出すことができる。

高品質なファブリックをふんだんに配し、カッパーをアクセントとしたフィニッシャーを配したインテリアも、モダンで洗練された雰囲気がたっぷり。機能性に富んだ大画面ナビ、充実したポケッテリアなど、「我慢」を強いられることなど何もない。

床下のバッテリーは、居住空間に影響しないように日産独自のラミネートセルの積層枚数を調整しながら搭載されている。人はもちろん荷物を積むことに関しても、デイズと同等のポテンシャル(107L:4名乗車時)がしっかりキープされている。

つまりサクラには、持つ喜びも使う悦びも、十二分に備わっているということだ。

車両本体だけでなく、自宅の充電設備にも補助金が

あえて気になる点を挙げるとすれば、やはり、WLTCモードで180kmという割り切った感のある航続距離だろう。もっとも自宅ガレージに普通充電設備さえ備えておけば、8時間でフル充電が可能=ひと晩、自宅でつないでおけば翌日には満タン状態となっているのだから、ある意味、ガソリンスタンドに通うよりもお気楽と言えそうだ。

画像: 床面の必要な凹凸に合わせて、ラミネートセルを10枚~20枚積層。容量は20kWと控えめだが、急速充電なら最大40分で80%まで回復させることができる。

床面の必要な凹凸に合わせて、ラミネートセルを10枚~20枚積層。容量は20kWと控えめだが、急速充電なら最大40分で80%まで回復させることができる。

ロングドライブに行く時には、ナビゲーションに備わる「Nissan Connect サービス」機能を有効活用しよう。バッテリーの残量や道路状況を考慮して、最適なルートマネジメントをサポートしてくれる。エアコン冷媒を用いた冷却システムによって、継ぎ足し充電を繰り返しても急速充電性能は安定している。

ちなみに、自宅の充電設備の設置にもしっかり補助金が期待できることにも注目したい。今ならサクラのおかげで、いろんな「お得」が楽しめるかもしれない。

サクラとeKクロスEVの強力タッグによって、電気で走る軽自動車が日本のEV市場を一気に活性化させる可能性はそうとう高い。待望の「満開宣言」が出ることを、実は勝手にワクワクしながら待っている。(写真:伊藤嘉啓)

画像: 車両本体だけでなく、自宅の充電設備にも補助金が

日産 サクラX 主要諸元

●全長×全幅×全高:3395×1475×1655mm
●ホイールベース:2495mm
●車両重量:1070kg
●モーター:交流同期電動機
●最高出力:47kW(64ps)/2302-10455rpm
●最大トルク:195Nm/0-2302rpm
●バッテリー総電力量:20kWh
●WLTCモード航続距離:180km
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:155/55R14
●車両価格(税込):239万9100円

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