三菱i-MiEV以来となる軽乗用規格の電気自動車「日産サクラ」に初試乗。「日本の電気自動車の中心になるクルマを目指して、日本を象徴する花の名前を冠した」という高い志の深層を、チェックしてみた。実質約178万円からという現実的な価格設定もさることながら、その完成度はやはり大いに気になるところだ。

実質的な価格も走りのゆとりも、ターボ付きの上級ハイウェイスターに匹敵

サクラのラインナップは3グレードからなる。スタート価格は233万3100円からで、補助金(ADASの装備などを条件とする55万円上限)を考慮すれば、実質約178万円からとなる見込みだ。これは近年、着実に上昇している軽自動車の価格トレンドを考えれば、納得できるプライスタッグだと思う。

画像: プロジェクタータイプの3眼ヘッドランプは軽自動車初の装備。フロントマスクは、アリアにも共通するデザイン言語でまとめられている。全長3395×全幅1475×全高1655mmで、ホイールベースは2495mm。

プロジェクタータイプの3眼ヘッドランプは軽自動車初の装備。フロントマスクは、アリアにも共通するデザイン言語でまとめられている。全長3395×全幅1475×全高1655mmで、ホイールベースは2495mm。

価格的には、プラットフォームを共有する「デイズ」FFモデルの最上級グレード「ハイウェイスターGターボ アーバンクロム プロパイロットエディション」(178万900円)とほぼ同等だ。ラインナップにおいては確かに、フラッグシップ的な位置づけにあると言っていい。

興味深いのは、サクラが価格だけでなく走行性能でも、フラッグシップにふさわしい余裕を垣間見せてくれたことだろう。搭載される電気モーターは最高出力こそ自主規制枠内の64psで660cc直3ターボユニットと同等だが、最大トルクはほぼ倍の195Nmに達する。

車両重量は130~140kg重くなってはいるものの、ゼロ発進からラグを感じさせることなく一気に立ち上がるトルク特性はやはり快感だ。思い切りよくアクセルペダルを踏み込めば、瞬間的にシートバックに背中が押し付けられる感覚まで楽しめる。

初速のツキが良いだけでなく、軽い脈動感を伴ったスムーズなふけ上がりや伸びやかな加速感は、昨今のしつけの良いターボユニットに通じる「洗練された速さ」を伴なっているように思えた。もちろん終始ノイズは控えめで、上級感ではターボユニットを凌ぐ。

まずは「極上」と言っていい加速体験が、フラッグシップとしてのサクラの才能の片鱗を、見せつけてくれたのだった。

低重心でどっしりとした乗り味。安定感とともに上質感も漂う

フラッグシップらしい完成度を感じさせたのは、加速感だけではない。

街乗りレベルの30km/hほどから首都高速など80km/h程度までの速度域で乗り込んでいっても、とことん落ち着いた挙動を保つ。20kWhの駆動用リチウムイオンバッテリーを床下に配置するのに合わせて、フロアまわりにはデイズに対して剛性材が横方向に3本も追加された。確かに、いかにも重心が低くどっしりとした印象だ。

画像: e-Pedal Stepは、減速時に最大0.2Gを発生。ただしかつてのe-Pdalのように、完全ストップまではフォローしない。

e-Pedal Stepは、減速時に最大0.2Gを発生。ただしかつてのe-Pdalのように、完全ストップまではフォローしない。

アッパーボディについてはとくに変更されていないとのことだったが、体幹そのものもしっかりしている。直進性に優れていることはもちろん、緊急回避をイメージして急な車線変更を繰り返しても破綻するそぶりはなく、安定した姿勢を保ち続けることに驚かされた。

タイトなコーナリングでも、ふらつきや揺り戻しに不安感を覚えることはない。比較的速度域が高いコーナーを攻めても、終始挙動は穏やかだ。リアには、デイズの4輪駆動モデルと共通の3リンクリアサスペンションを採用。しなやかな乗り心地ときびきびした走りの両立を目指したという。

乗り味に関してひとつ気になったのは、街乗りレベルの40~50km/hで路面が荒れていると、コツコツとした振動や路面からのノイズがかなり強めに伝わってきてしまうことだろうか。電気モーターが静かだからこそ、もう少し遮音レベルを上げたほうが、総じてのイメージをさらに上質に感じさせてくれると思う。

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