これまでのBMW M135i xDriveはライバルのホットハッチ、たとえばフォルクスワーゲン ゴルフRと比べるとややポジションが曖昧だった。今回のマイナーチェンジにあたるLCI(ライフサイクルインパクト)で、それがどう変わったのかを確かめた。(Motor Magazine 2022年7月号より)

粗さが消えたシャシ性能どんな場面でも快適な走り

試乗会に現れたニューM135i は、少なくともエクステリアに大きな変化はなく、キドニーグリル、ドアミラー、新しいデザインが与えられたルーフスポイラー、そしてサイドとリアスカートなどがチタンカラーで仕上げられている程度である。

ボンネットを開いてその内部を覗いてみると、エンジンカバーに「M Performance」のロゴが輝く2L直4ターボエンジン(B48型)が鎮座する。その最高出力は306ps、最大トルクは450Nmと従来モデルから変化はない。さらに組み合わされるトランスミッションは従来同様ZF製の8速オートマチックである。その結果、走行性能も0→100km/hは4.8秒(パフォーマンスパッケージ搭載モデルは4.7秒)そして最高速度は250km/hと、ここにも変化は見当たらない。

デザインのスポーツシートに腰を落とし、太めのステアリングホイールを握る。直4ターボエンジンは1800rpm付近から十分なトルクを発生し、7000rpmまで淀みなく吹け上がる。走り出して感じたのは、フロント15%、リアは30%剛性を高め、より硬めのブッシュを採用したことによるシャシのしっかりとした挙動だった。それはとくにコーナーでは正確なインフォメーションを伝えてくるステアリング特性もあって、従来モデルよりもダイレクトでありながら安定した走りが可能になっている。

またテスト車に装着されていたタイヤ(ミシュランパイロットスポーツ)のグリップ力がさらにコントロール性を高めている。こうしたスポーツ性の追求にもかかわらず乗り心地は快適で、従来モデルに見られた、突き上げられるようなシャシの粗さは消えていた。

画像: 正面には10.25インチのワイド画面、中央に10.7インチのタッチ画面が配置されている。

正面には10.25インチのワイド画面、中央に10.7インチのタッチ画面が配置されている。

しかし残念なのは、このM135i xDriveはハルデックス4WDシステムの採用により最大トルク450Nmのうち、後輪への伝達トルクは最大で50%に制限されている。ライバルのゴルフはトルクベクタリングがオプションで選択可能であり、後輪へ100%のトルクを配分することも可能だ。

こうした点は残念だが、LCIを受けたM135i xDriveはM社のエンジニアによってリファインされ、粗っぽさが消滅し、快適なスポーツシャシがもっとも大きな魅力となっていた。アップデートによりM135i xDriveはウイークデイの移動の足、そしてウイークエンドのドライブを楽しむスポーツ走行との両立をより高い次元で可能にする、スポーツツアラーとしての完成度が高められていた。

冒頭に恒星の寿命になぞらえた話をしたが、乗り終えてみればICE搭載のスポーツハッチはまだまだ健在なのだと悟った。

新型M135i xDriveの日本での発売時期や価格は、この原稿を書いている2022年5月中旬の時点ではまだ発表されていない。(文:アレキサンダー・オースルテン<キムラ・オフィス>)

BMW M135i xDrive 主要諸元(欧州仕様値)

●全長×全幅×全高:4315×1799×1434mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1600kg(EU準拠)
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1998cc
●最高出力:225kW(306ps)/5000-6250rpm
●最大トルク:450Nm/1800-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム ・50L
●WLTPモード燃費:12.8-13.5km/L(EU準拠)
●タイヤサイズ:225/40R018

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