100台の予定が早くも400台を超えたグラディエーター
そして、グラディエーターだ。ラングラーをベースにしたピックアップトラックは2019年に米国で発表されて以来25万台以上を販売し、2020ノースアメリカン・トラック・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、米国のトラック市場の勢力図を塗りかえた。そんなグラディエーターは5.6mもの全長と、日本では馴染みの少ないピックアップトラックということで、当初FCAジャパン(当時)は導入を考えていなかった。
だが、その人気を聞きつけた日本のディーラーやジープオーナーから「導入しないの?」という声が高まり、それならとオーストラリア仕様の右ハンドルをベースに100台導入することになった。ところが、ショールームに実車がない状態にもかかわらず、前述のように3カ月で400台もの受注があり、5月末の段階でその数は450台をオーバーしている。なお、グラディエーターは限定モデルではなく、カタログモデルとしてラインナップされているから、現在でも受注は可能だ。
グラディエーターが人気を集めた理由には、「クール(カッコいい)」「他にはないクルマ」「自分を表現できる」などが挙げられている。日本仕様はトップグレードのルビコンのみで、ルーフはもちろん条件さえ許せば左右のドアも取り外し可能で、アウトドアで思う存分楽しめる点は、他のトラックでは得られないものだろう。
ジープはファミリーを体現するブランド
ジープ人気の要因のひとつに、オーナーのコミュニティが増えている点もあるようだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、ここのところリアルは少し減っているのだが、オンラインも併用して、SNSなども活用しながらのオーナーズミーティングなど、さまざまなイベントが開催されている。しかも、こうしたイベントは家族ぐるみで楽しむことができる。「ジープ ウエーブ」なんていうオーナー同士のコミュニケーションも広がっている。
社会人になってしまうと、仕事や職場関係以外に新たな友人や仲間を作ることは難しくなる。だが、ジープというクルマを通して、新たな友人や仲間が生まれる。ジープはファミリーを体現するブランドであり、コミュニケーション ツールでもあるのだ。これは、他のブランドにほとんど見られない特長であり、魅力だろう。
また、比較的早い段階から日本仕様に右ハンドルを用意した点も効果が大きいだろう。とくに国産車からの乗り換えや、販売台数を増やしていくために右ハンドル化は不可欠と思われる。さらに、かなりの頻度で発表される限定モデルも、ジープの人気を増幅させている。日本では毎年20車種くらい、さまざまなジープ車から限定モデルが発売されているが、ボディカラーや装備など専用アイテムが人気を集め、いずれも短期間で完売しているようだ。
SUVは、どうしても燃費などの面で不利な部分もある。それゆえジープでも、プラグインハイブリッドの「4xe」を導入するなど、電動化は進んでいる。それでも、「Go Anywhere. Do Anything.(どこにでも行ける。何でもできる)」という、ジープのフィロソフィは不変だ。こうした、他のクルマでは得られない魅力を持ち続ける限り、日本においてもジープの人気が続くことは間違いなさそうだ。
■ジープ グラディエーター ルビコン 主要諸元
●全長×全幅×全高:5600×1930×1850mm
●ホイールベース:3490mm
●車両重量:2280kg
●エンジン:V6 DOHC
●総排気量:3604cc
●最高出力:209kW(284ps)/6400rpm
●最大トルク:347Nm(35.4kgm)/4100rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・83L
●WLTCモード燃費:未発表
●タイヤサイズ:255/75R17
●車両価格(税込):840万円