もしかしたら、911より速いのかもしれない
そんなパナメーラ ターボSは、なるほど走りのシーンを問わず、ありとあらゆるシチュエーションで呆れるほど脚の速いモデルだった。地元ドイツで開催された国際試乗会では、アウトバーン上では何の緊張感もないままにたちまちオーバー270km/hをマークし、郊外の集落を通過し終わって郊外の一般路へと差し掛かれば、それまでの50km/h制限から新たな速度制限である100km/hにまで、瞬時に速度を回復してしまう。
ワインディング路に差し掛かれば、徹頭徹尾のオン・ザ・レール感覚のままに「もしや、これって911よりも速いのでは!?」と思えるペースでコーナーを駆け抜ける。これほどあっさり、ここまでのハイペースでさまざまなシーンをクリアできてしまって良いのか!?と、一瞬そうした疑問も頭をもたげたほどだ。だが、思えばベースとなったターボ以上を求めるというユーザー層にとっては、これほどのわかりやすい究極感こそが「望むところ」ということなのかもしれない。
そんなハイパフォーマンスが本当に必要なのか?と問われれば、ほとんどの人にとっては「そうではない」と答えざるを得ない。しかし、それでも世の中には「さらに上を行くモデルが欲しい」という真に贅沢なユーザーが確実に存在するのだ。
そうした人々にとっては、先の400万円近い価格差というのもむしろ「勲章」の一種であるはず。頂点のさらに上を行くパナメーラ ターボSというクルマは、要はそうした人のための1台であるに違いない。
■ポルシェ パナメーラ ターボS 主要諸元
●全長×全幅×全高:4970×1931×1418mm
●ホイールベース:2920mm
●車両重量:1995kg
●エンジン:V8 DOHCツインターボ
●総排気量:4806cc
●最高出力:405kW(550ps)/6000rpm
●最大トルク:750Nm(76.5kgm)/2250-4500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・100L
●EU総合燃費:8.7km/L
●タイヤサイズ:前255/45R20、後295/35R20
●当時の車両価格(税込):2481万円