電動化されても変わらないMINIの伝統
今回、発表された「MINIコンセプト エースマン」は、MINIクーパーとMINIカントリーマンの中間くらいにカテゴライズされる、クロスオーバーモデルだ。
MINIブランドの責任者であるステファニー・ヴルストは「このコンセプトカーは、MINIが完全に電動化される未来に向けて、どのような革新を遂げようとしているか、を象徴しています。それはブランドイメージそのものであり、電動化されても変わらないゴーカートフィールや、没入感溢れるデジタル体験、環境への優しさといった今日的なテーマを反映しています」と語る。
MINIコンセプト エースマンのデザインテーマは「Charismatic Simplicity」。機能性を追求するためのオーバーハングが短い2ボックスデザインや、ミニマムなサイズ感に詰め込まれたマキシマムなユーティリティは、MINIの伝統的な基本的価値を再定義したものにほかならない。
全長4050m×全幅1990m(というのはかなり立派なサイズだが)×全高1590mmといういかにもMINIらしいプロポーションは、全体的にシンプルな面構成とフラッシュサーフェス化が徹底され、とてもすっきりとした印象にまとめられている。
一方で、シティ派クロスオーバーモデルとしての、オールラウンド性や堅実感もしっかり表現されている。ボディの下端にまとう広いサラウンド、強い輪郭を描いたホイールアーチ、20インチの大径ホイール、さりげなく目立つルーフラック、アンダーライドプロテクションとしてスタイル化されたフロントとリアの「バランスパネル」などが、エースマンならではの力強さを感じさせてくれる。
MINIらしさという意味では、特徴的なユニオンジャックのモチーフも取り入れられた。リアライトのグラフィックに加え、ルーフラック部分にも大胆にあしらわれている。
華やかな光とサウンドとともに「ご主人様」を迎えてくれる
インテリアはさらに斬新だ。アレック・イシゴニスが1959年にこだわり抜いたシンプルネスを受け継ぎながら、プレミアムな素材と心地よい配色とのコーディネイトによって、快適で過ごしやすく、しかも機能的なキャビンを演出している。
ダッシュボードにもルーフラックと同様に、ユニオンジャックパターンを配したアレンンジを加え、トータルでの調和を生み出している。インターフェイスは単にデジタライズされただけではなく、物理スイッチが生み出すアナログ感もしっかり機能性向上に役目を果たしている。
各操作系のスイッチは、直感的な操作を可能にするためのロータリーノブ式、もしくはトグルスイッチとして個別に設計されたという。中央に装備した円形ディスプレイは、OLED(有機LED)表示を採用。3つの表現モードを備え、パーソナライズ、ナビゲーション、エンターテインメントについて新しいクルマとのつながりを体感させてくれるという。
クルマとの新しいコミュニケーションと言えば、内外装のライティング機能とサウンドが融合した、ユニークな演出にも注目したい。ヘッドランプのLEDマトリックスやグリルエレメント、サウンドシーケンスを伴うグリル表面のグラフィック表示など、圧倒的に個性的なインパクトを発揮する。
ドアを開けると、入り口側の床にカラフルなグラフィックが点灯。「カラーバースト」と呼ばれる放射状のピクセル投影によって、乗り込む直前から陽気な雰囲気を醸し出してくれるようだ。
昔懐かしいブリキのトイロボットを思わせる表情と相まって、MINIはやっぱりどこかペットな感覚とともに、良き相棒になり続けてくれることだろう。完全電動化の時代が訪れたとしても、MINIのキュートで実用性に富んだカリスマ性は、けっして失われることはなさそうだ。