2009年、6代目ゴルフの装いをまとったゴルフヴァリアントが登場した。ただし、ゴルフヴァリアントは先代5代目後期に登場したばかりであったため、実際はビッグマイナーチェンジ版と言える存在で、フロントマスクやインパネは新型6代目だったが、基本骨格やリアまわりは先代5代目のままで「ゴルフヴァリアント5.5」とも言われた。では実際、走りはどうだったのか。Motor Magazine誌はデビュー間もなく行われたド欧州市場向け試乗会に参加している。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年12月号より

ワゴンバージョンを求める声に応えて早くも登場

世界の国々ではもちろんのことだが、同じEU圏内でもそれぞれの国で嗜好に大きな違いが存在している。たとえばワゴンはフランスやイタリアではあまり人気がないが、ドイツやイギリスではとても人気があり、全体の30%ほどを占めている。ドイツではパサートの70%がワゴンという例もあるほどだ。それゆえにドイツの自動車メーカーはCセグメント以上ではバリエーションのひとつとして必ずワゴンを用意しているのである。

画像: ダッシュボード、インパネ、マルチファンクションディスプレー、3本スポークステアリングなど、インテリアはすっかりゴルフⅥへと変身。

ダッシュボード、インパネ、マルチファンクションディスプレー、3本スポークステアリングなど、インテリアはすっかりゴルフⅥへと変身。

今回紹介するゴルフヴァリアントはその典型で、ゴルフⅢ時代から続く息の長いバリエーションである。ゴルフⅤでは荷室まわりがワゴンより圧倒的に大きなゴルフプラスがカタログに加わったこともあってその登場が遅れていたのだが、便利なハイルーフバージョンの登場にもかかわらずワゴンバージョンを求める声が大きく、モデル末期になって追加しなければならなくなったという経緯があった。

そんなこともあってか、今回のゴルフⅥではハッチバックの発売2年目にして早くもワゴンバージョンが登場した。

エクステリアでは、フロントエンドはハッチバックから移植された横長グリルに両側が釣り上がったヘッドライトユニットでまさにゴルフⅥだが、リアエンドは旧型と大きく違うところはない。サイズを見ると、全長4534mm、全幅1781mm、全高1504mm、そしてホイールベースは2578mmと、全長がわずかに先代よりも短くなっている。

インテリアを見ると、インストルメントパネルは新しくなっているが、ドアの構造はゴルフⅤから変わっていないことに気づく。サイドウインドウ開閉スイッチが配置されているドア内張りのコンソールが前方に向かって立ち上がっておらず、水平に伸びたままなのだ。つまりゴルフVのままというわけである。

また、カーゴルームの容量も旧モデルと同じで、リアシートを起こした普通の状態で505L、そしてリアシートバックレストを倒すと1495Lにまで拡大する。残念なことにやはりワンアクションで荷物室の床が平らになるという工夫はない。相変わらずリアシートの座面を起こし、垂直に立てて、改めてバックレストを倒す。このあたりワゴンとしての性格を考え、積載能力を重視したということなのだろう。

静粛性や操舵の動きに先代からの進化が感じられる

さて、今回レポーターが参加した試乗会は、主にドイツ、ヨーロッパ向けのもので、残念ながらガソリンエンジンが用意されておらず、試乗には1.6Lコモンレール・ディーゼルターボを選択した。

画像: フロントセクションが一新されたのと比べると、リアに大きな変化はなく、コンビランプがアップデートされたくらい。

フロントセクションが一新されたのと比べると、リアに大きな変化はなく、コンビランプがアップデートされたくらい。

最高出力105ps/4400rpm、最大トルク250Nm は1500rpmで発生し、2150ユーロ(約29万円)のオプションで組み合わされる7速DSGによってスタートから時速100kmまで11.9秒、最高速度は190km/hに達する。

すでに1500rpmで最大トルクを発生するコモンレール・ディーゼルのパワーは7速DSGとの相性が良く、空車重量(DIN)1391kgのワゴンのボディをスタートからとてもスムーズに、そしてビビッドに運ぶ。スロットルペダルを強く踏み込んでもショックはミニマムで、トルコンの快適性に勝るとも劣らない。

ちょっと気になったのは、最大積載量を583kgと想定しているらしく、リアのダンパーが悪路でバウンドした際にわずかに突っ張り過ぎるような固さを感じたこと。しかし全体を通じて高い快適性を提供する。

一方、ステアリングはドライバーの手首の動きに対して繊細に、スムーズにそして確かな感触でクルマの向きを変える。このあたりはゴルフⅥに近いフィーリングだ。

特筆すべきはゴルフⅥ譲りの静かさで、停止時のアイドリング中から走行中まで、まるで電気自動車に乗っているかのような感じさえする。このあたりもゴルフⅤよりも進化しているようで、これにはドア開口部のボディまわりに張り巡らされた分厚い防音ラバーシールが効果を上げているようだ。

なお、ガソリン車は80psの1.4、102psの1.6、122psの1.4TSI、160psの1.4TSIがラインナップされているが、このうち日本市場にはDSGが組み合わされるふたつの1.4TSIが導入されることになるだろう。

また、日本市場に向けて2.0TSIも準備されているという情報もあるが、この原稿を書いている時点では、まだ正確な日程や価格などは発表されていない。(文:木村好宏/写真:Kimura Office)

■フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアント 1.4TSI(160ps)主要諸元

●全長×全幅×全高:4534×1781×1504mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1385kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1390cc
●最高出力:118kW(160ps)/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1500-4500rpm
●トランスミッション:7速DSG[6速MT]
●駆動方式:FF
●EU総合燃費:16.4km/L
●タイヤサイズ:205/55R16
●最高速:220km/h
●0→100km/h加速:8.4秒
※EU準拠

■フォルクスワーゲン ゴルフ ヴァリアント 1.6TDI(105ps)主要諸元

●全長×全幅×全高:4534×1781×1504mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1391kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:77kW(105ps)/4400rpm
●最大トルク:250Nm/1500-2500rpm
●トランスミッション:7速DSG[6速MT]
●駆動方式:FF
●EU総合燃費:20.8km/L
●タイヤサイズ:205/55R16
●最高速:190km/h
●0→100km/h加速:11.9秒
※EU準拠

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