信条である12気筒モデルの伝統は残っていくはずです
千葉 296GTS(以下GTS)と296GTB(以下GTB)では、ターゲットとするユーザーは違いますか?
フェデリコ パストレッリ(以下フェデリコ) GTSのターゲットとなるお客様は、オープンエアドライブを楽しみたい方です。GTBにするかGTSにするか迷っているなら開放感のあるオープンエアな走りが好きな方に選んでいただけると思います。技術的な部分は大変よく似ていてメカニズムや空力性能も同じものが採用されています。ただ違いもあり、GTSは車両重量が約70kg重くなります。GTBは、純粋にパフォーマンスを求める方が、GTSは、ファントゥドライブを満喫しつつもパフォーマンスも求めるお客様が多くなると思います。
千葉 GTSは、オープン化によって若干車両重量は重くなっていますが、それでも最高速や0→100km/h加速、EV走行距離、EV走行時の最高速度などのパフォーマンスはGTBと同等です。それはどのような工夫によるものですか?
フェデリコ パフォーマンスはまったく同じではありません。0→100km/h加速は同じですが、これはタイヤのグリップ部分を工夫したものです。車両重量の70kgの差は、0→200km/h加速に違いが出て、GTBが7.3秒、GTSが7.6秒となります。
千葉 背後から聞こえてくるフェラーリサウンドは本当に官能的ですね。オープンにするとエンジンサウンドがよりダイレクトに聞こえます。それに合わせたサウンドチューニングはされていますか?
フェデリコ V6で素晴らしいエンジンサウンドを実現すべくより深い開発をしてきました。これでルーフを開けていても閉めていても聞こえてくるサウンドが素晴らしいものになっています。個人的にはGTBはラブリーな音、GTSはファンタスティックな音という違いがあると思っています。エンジンや排気システムなどは同じでが、やはりオープンエア時にファンタスティックな音が実現できるようにクルマ全体で開発してきたのです。GTSの音もできるだけ早く、聞いてみてください。
千葉 現在、フェラーリのラインナップはV8エンジンのローマ、V6の296GTB、そしてこの296GTSですが、ユーザーから新しい12気筒エンジンの登場を望む声はありませんか?
フェデリコ フェラーリの伝統であり、信条である12気筒モデルは常にラインナップしています。今後も伝統は残っていくはずです。
千葉 最後にコロナ禍における、フェラーリジャパンのビジネスについてですが、社長が赴任されてからこれまで思うような活動できましたか?コロナウイルス感染症が終息したわけではありませんが、そこで生まれた新しいビジネス展開なども教えてください。
フェデリコ コロナ禍は、お客様とのコンタクトのあり方を大きく変えてしまいました。私たちは、安全面に配慮しながら、少人数でも機会を増やして、お客様との接点を維持し続け、出会いを増やしてきました。たとえば、ローマのローンチの時などは、お客様とのコミュニケーションにデジタル化を加速させ、スキルを積むことができました。これはコロナ禍が終息した後も続けられることです。コロナ禍で学んだことも組み合わせ、状況に合わせて変化していくことができたことは、フェラーリジャパンにとって、とても貴重な経験になっています。
千葉 ありがとうございました。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:フェラーリジャパン)