現行モデル発表日:2021年4月6日
車両価格:1494万円〜1899万円
BEVであってもアウディらしさは健在
個人的にBEVはいまだ長距離ドライブ向きではないと考えているが、2グレードのeトロンGTを駆り、東京から自宅のある京都までのドライブを楽しんでみることにした。
まず、eトロンGTクワトロに試乗したのだが、ドライブフィールは基本メカニズムを共有するポルシェ タイカンとはまるで違っていた。どっしりと路面に張り付いて高速クルージングする感覚は、電子制御シャシの優秀なA8を彷彿とさせる。否、さらに全高が低くワイドな車体ゆえ重厚感はA8どころではない。BEVゆえの低重心というわけだが、実際の車重ほど重く感じさせないのはシャシとその制御が上手く働いているからに他ならない。ステアリングフィールにも落ち着きがあり、街中での乗り心地も良く、スポーツカーのようだったタイカンのキャラクターとは一線を画している。
加速感はさすがにBEVだ。踏み込みと同時にトルクの波に襲われる。内燃機関乗りにはいつまで経っても“異次元感覚”だ。速いのは当然のことながら、加速自慢のテスラ モデルSと比べると完全にシャシが優っていて安心感がある。制動も同様で、BEVといえども「走る・曲がる・止まる」の基本の性能で判断しなければならないということは瞭然というものだろう。
一方のRS eトロンGTはどうか。スペック的にはさほど変わらないように見えるが、走り出した瞬間に「これぞクワトロRSだ」と思えた。
エアサスペンション仕様で、後輪操舵も備わる。乗り心地はノーマルに比べ明らかにソリッド&フラットで、四肢の踏ん張りが乗り手へダイレクトに伝わってきた。4本のタイヤの存在がわかりやすいとでも言おうか。そこがすでにRSらしい。そのうえステアリングフィールは機敏だったから、車体の幅を狭く感じてしまったほど。
端的に言ってRSの方がドライブ中には“クルマが小さい”。RSに乗って初めてタイカンとの血のつながりを感知した。そしてその圧倒的な加速フィールからはクワトロ社による過去のRSモデルの数々が思い出される。
BEVであってもブランドの味わいの表現が可能であることを教えてくれた。eトロンGTの長距離テストはそれだけで収穫があったというものだ。(文:西川 淳)
アウディRS e トロン GT 主要諸元
全長:4990mm
全幅:1965mm
全高:1395mm
モーター種類:交流同期電動機
バッテリー容量:93.4kWh
一充電走行距離:534km
最高出力:475kW
最大トルク:830Nm
車両重量:2320kg
駆動方式:4WD
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
タイヤサイズ:前245/45R20 後285/40R20