前進2段の変速機構を組み合わせた新開発のCVTを採用
このCVTは、ロー/ハイ2段の副変速機構を採用し、変速比幅を拡大したことで低速域のトルクを向上させているのが特徴だ。話を聞いた四輪エンジン第一設計部の中村氏によれば、「1500〜2500rpmで5%アップした」という。さらに、その副変速比効果は100km/h巡航の回転数にも現れ、高速走行時の燃費の向上にも貢献しているという。
K6A型エンジンはインテークマニホールドやシリンダーヘッドなどに改良が加えられ、力強さを増しレスポンスを高めた。パレットSW TSの車重は960kg、軽自動車として決して軽い方ではない。例えば、同じK6A型ターボエンジンを搭載するワゴンRスティングレーTSと比べると80kg、アルトラパンTからは140kgも重い。しかし、その重さをあまり感じさせないのも、この改良エンジンとCVTの恩恵なのだ。
エクステリアやインテリアには専用装備やデザインが施され、パレットと差別化されている。上質感の演出もなかなか上手い。専用装備となるディスチャージヘッドライトやオートライトシステムをはじめ、バックモニター付きCDプレーヤー(メーカーオプション)、キーレスプッシュスタートシステム、保冷機能付きの収納、後席両側スライドドアなど軽自動車の範疇を超えた豪華な装備もこのSWの特徴だと言っていい。
軽自動車らしくない装備を持ったパレットSWは、走りもその常識を覆すものだ。
TSの最高出力は、軽自動車ターボの自主規制いっぱいの64psを発揮する。パワフルで存分に走りを堪能できるレベルだ。キビキビと軽快なので、運転していて楽しい気分になる。これなら長距離も苦にならないだろう。ただ、Rのきついカーブなどでは全高が高い分、ロールはワゴンRよりも大きく感じた。
パレットのNAエンジン搭載車にも試乗した。こちらの最高出力/最大トルクは、ターボ比10ps/32Nmダウンの54ps/63Nmだが、低回転域のトルクに厚みがあるため、発進加速にも不満を感じることは少ないだろう。
軽快感こそTSには劣るが、アクセルの踏み込み量の分だけ前に出るといった感じでかったるさもなく、踏み増す必要も感じられない。また、街中を流すレベルでは室内の静粛性は保たれていた。
後席にも座ってみたが、この広さはもう軽自動車だということを忘れてしまうだろう。黄色いナンバープレートを見るまでは・・・。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:村西一海)
スズキ パレットSW TS 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1735mm
●ホイールベース:2085mm
●車両重量:960kg
●エンジン:直3 DOHCターボ
●排気量:658cc
●最高出力:47kW(64ps)/6000rpm
●最大トルク:95Nm/3000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:20.0km/L
●車両価格:155万9250円 (2009年当時)